暁 〜小説投稿サイト〜
万華鏡の連鎖
銀河動乱
波瀾の種子
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ルローン攻略戦、だったかな?
 作戦を幾つか提案して、悉く却下された。
 やる気が失せて、怠け者してる所を、しっかり見られたのさ」
 流石、ヤン・ウェンリーだ。
 溜息を吐き、言葉を探す。

「納得だ、了解せざるを得ん。
 校長、いや、シトレ閣下は?
 第5次イゼルローン攻防戦の時も、幕僚だったんだよな。
 本領発揮して追い出された、とは聞いてないぞ」
「手厳しいな、ぐうの音を出ないよ。
 格好付けてる訳じゃないが、記憶に無い」
 また、これだ。
 本気か、冗談か、分らん。

当たって砕けろ(ゴー・フォー・ブローク)、だな。
 統合作戦本部に行く、一緒に来てくれるよな?」
「役に立つかどうか、わからないけどなあ。
 乗り掛かった舟だ、付き合うよ」
 魔術師の真意、本音は(うなぎ)の様に掴み難い。

「有難い、助かる。
 俺が話し終えるまで、黙っててくれるか?
 シトレ元帥が尋ねるまで、何も言うなよ。
 先に喋られると説得力、心理的影響が弱まる」

「なんだか、酷い言われ様だな。
 とりあえず、微力は尽くすさ。
 折角、生きて帰ったんだ。
 お前に何かあれば、ジェシカが悲しむ。
 一人で危ない橋は渡らず適材適所、役割分担を考えようじゃないか」
 『敵を騙すには、まず、味方から』、か。
 どう見ても輝かしい実績を挙げた軍人、英雄には見えない。
 外見と裏腹に、信頼の置ける男が肩を叩く。

 数分後ムーア提督に根回し、説得も済んだ。
 統合作戦本部長の側近、次席副官に超光速通信を送る。
 キャゼルヌ少将の事務処理能力、現状認識に問題は無い。
 秘密裏に接触の準備を頼み、高速巡航艦に乗り換えた。

 シトレ元帥の瞳は碧く、鷹の様に鋭い。
 伝説の銀河巡視(パトロール)隊士官、独立(グレー)レンズマン有資格者やもしれぬ。
「話は聞いた、実に厄介な問題だ」
「僭越ですが、言わせて下さい。
 認識が、甘過ぎます。
 本来は弱者を護る為にある憲法、民主主義の根幹が浸蝕されています。
 対策を練る前に、無数の犠牲者が餌食となった事実を直視しなければなりません。
 家族の幸福を謳う組織が信者を駆り立て、家族を借金地獄に追い込む加害者に変えたのです。
 約150年に渡り献金、法律の悪用、巧妙な論理の擦り替え、恫喝が繰り返されました。
 両腕両脚を縛られた儘、汚い手を使い放題の悪党と闘う覚悟が要ります。
 1万年を越える歴史に裏打ちされ、磨き抜かれた精神支配の技術は想像を絶しますからね。
 正義は無力、の認識を肝に銘じなければなりません」
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