暁 〜小説投稿サイト〜
万華鏡の連鎖
銀河動乱
波瀾の種子
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
訳ありませんでした」
 ムーア中将の顔を憤怒、不安、恐怖、打算が過る。
 多彩な感情の(せめ)ぎ合い、疑心暗鬼の闘争は数秒に及んだ。

「前置きは要らん、どうなった?」
 性急に声を荒げ、内心暴露の醜態に気を遣う余裕も無い。
「提督は被弾の際に発声不明瞭となり、筆談で指揮を執られました。
 閣下が第六艦隊を潰滅から救い、第二艦隊も援護されたのです。
 艦隊指揮官の負傷は戦意の低下、士気崩壊を招きかねません。
 千変万化する戦場に臨機応変、的確な措置で対処は当然でありましょう。
 小官は士官学校の同期、ヤン・ウェンリー准将と懇意にしております。
 エル・ファシルの英雄は統合作戦本部長、次長の評価も高いですからね。
 閣下の地位は安泰です、声望が傷付く事も御座いません」

 予想の通り、怒鳴り声は響かなかった。
 強張っていた表情が緩み、打算の優勢を匿す配慮は無い。

「気に喰わん、褒める気は無いぞ!
 それで機嫌を取った心算か、もっと、上手い遣り方を考えろ!!
 だが、まあ、済んだ事は、仕方が無い。
 貴様も案外、腹黒い様だな。
 杓子上記で肝の据わらん奴、小心者と思っとった。
 見損なっていた、かもしれん。
 今後、勝手な真似は断る。
 俺を裏切った奴に、未来(さき)は無いぞ」

 第一声に続く第二声も想定内、表面的優勢の維持に執着している。
 柔よく剛を制する(ことわざ)、下手に出て丸め込む懐柔策は念頭に無いらしい。
 出世の為に連携を望む気なら、相手が悪感情を抱く愚は避けるだろうに。
 逆効果になる事も薄々、感じていない筈は無いが。
 自分に自信が無いから、恫喝を織り混ぜ、虚勢を張る。

「御警告、肝に銘じます」
 短く言葉を返し、敬礼。
 不器用に表情を匿す瞳が泳ぎ、逡巡の色を覗かせる。

「言葉が過ぎました、御容赦を願えれば幸いであります。
 小官は閣下の御栄達に寄与致します、今後も御期待下さい。
 宜しければ帰還の際ヤン准将を伴い、統合作戦本部を説得に参ります。
 シトレ元帥の次席副官も懇意にしております故、御心配は要りません」
 ムーア提督が頷き、態勢を建て直す。

「言うまでも無いが、他言は無用だ。
 少しでも洩れた時は、連帯責任と思え!
 此の場に居る者、全員の首を引き抜いてやる!!」
 獰猛な声が響き、蒼い顔の幕僚に威嚇の視線を射込む。
 航宙士(アストロ・ノーツ)達も首を竦め、ペルガモン艦橋に静寂が訪れた。



 アスターテ星域戦から帰還の道中、ヤン准将と密談が認められた。
 ムーア提督の許可を得て、再び連絡艇に乗る。
 パトロクルス移乗の後、個室に籠った。

「グリーンヒル中将には、失望された事があってね。
 第6次イゼ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ