銀河動乱
波瀾の種子
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訳ありませんでした」
ムーア中将の顔を憤怒、不安、恐怖、打算が過る。
多彩な感情の鬩ぎ合い、疑心暗鬼の闘争は数秒に及んだ。
「前置きは要らん、どうなった?」
性急に声を荒げ、内心暴露の醜態に気を遣う余裕も無い。
「提督は被弾の際に発声不明瞭となり、筆談で指揮を執られました。
閣下が第六艦隊を潰滅から救い、第二艦隊も援護されたのです。
艦隊指揮官の負傷は戦意の低下、士気崩壊を招きかねません。
千変万化する戦場に臨機応変、的確な措置で対処は当然でありましょう。
小官は士官学校の同期、ヤン・ウェンリー准将と懇意にしております。
エル・ファシルの英雄は統合作戦本部長、次長の評価も高いですからね。
閣下の地位は安泰です、声望が傷付く事も御座いません」
予想の通り、怒鳴り声は響かなかった。
強張っていた表情が緩み、打算の優勢を匿す配慮は無い。
「気に喰わん、褒める気は無いぞ!
それで機嫌を取った心算か、もっと、上手い遣り方を考えろ!!
だが、まあ、済んだ事は、仕方が無い。
貴様も案外、腹黒い様だな。
杓子上記で肝の据わらん奴、小心者と思っとった。
見損なっていた、かもしれん。
今後、勝手な真似は断る。
俺を裏切った奴に、未来は無いぞ」
第一声に続く第二声も想定内、表面的優勢の維持に執着している。
柔よく剛を制する諺、下手に出て丸め込む懐柔策は念頭に無いらしい。
出世の為に連携を望む気なら、相手が悪感情を抱く愚は避けるだろうに。
逆効果になる事も薄々、感じていない筈は無いが。
自分に自信が無いから、恫喝を織り混ぜ、虚勢を張る。
「御警告、肝に銘じます」
短く言葉を返し、敬礼。
不器用に表情を匿す瞳が泳ぎ、逡巡の色を覗かせる。
「言葉が過ぎました、御容赦を願えれば幸いであります。
小官は閣下の御栄達に寄与致します、今後も御期待下さい。
宜しければ帰還の際ヤン准将を伴い、統合作戦本部を説得に参ります。
シトレ元帥の次席副官も懇意にしております故、御心配は要りません」
ムーア提督が頷き、態勢を建て直す。
「言うまでも無いが、他言は無用だ。
少しでも洩れた時は、連帯責任と思え!
此の場に居る者、全員の首を引き抜いてやる!!」
獰猛な声が響き、蒼い顔の幕僚に威嚇の視線を射込む。
航宙士達も首を竦め、ペルガモン艦橋に静寂が訪れた。
アスターテ星域戦から帰還の道中、ヤン准将と密談が認められた。
ムーア提督の許可を得て、再び連絡艇に乗る。
パトロクルス移乗の後、個室に籠った。
「グリーンヒル中将には、失望された事があってね。
第6次イゼ
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