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儚き想い、されど永遠の想い
428部分:第三十三話 鈴虫その四

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第三十三話 鈴虫その四

「御前が今しているとことは非常に素晴らしいことだ」
「そう言って頂けるのですね」
「思い出は宝石だ」
 義愛はこうも言った。
「心の中で永遠に輝くものだ」
「その通りですね。ですから」
「そして心の中で生きるか」
 今言ったのは義智である。
「人はそういうものか」
「思い出として残りそうして魂が入り」
「生きていくのか」
 義智の目が温かいものになっていく。
「人は死んで終わりではなく」
「はい、それすらもです」
「はじまりなのか」
 義智の目はだ。さらにだった。
 遠くを見るものにもなってだ。そうして言うのだった。
「素晴らしいことだな。それだけで」
「義智兄さんもそう思われますね」
「今まで人が死ねばそれで別の世界に行くと思っていた」
 義智の死生観がここで語られる。
「極楽なり地獄なりな」
「仏教的にですね」
「そうだな。仏教だな」
 義智自身も彼の死生観がそこにあることを否定しなかった。
 そのうえでだ。こうも言うのだった。
「六界のその世界の何処かにな」
「生前の行いによってですね」
「行くと思っていた。それが全てだと思っていた」
「しかしそれに加えてです」
「生きるか」
 義智はまた述べた。
「それぞれの人の中で」
「はい、永遠に」
「死は終わりではなく」
「はじまりでもあります」
「では御前は今は悲しんではいないな」
 次兄は弟にこうも尋ねた。
「そうなってはいないな」
「はい、悲しみは消えました」
 過去にはあった。しかし今はだというのだ。
「それはもう」
「そして今あるのは何だ」
「生です」
 死ではなくだ。それだというのだ。
「今の生と新しい生です」
「その二つの生か」
「心の生でもありますね」
 義正はこうも言った。
「そこにあるのは」
「そうだな。心のものもな」
「生ことは一つではない」
 このうえなく晴れ渡った目でだ。義正は話していく。
「そのことがわかりました」
「御前にとっていいことだったな」
 義愛はその目の末弟を見て述べた。
「真理さんと出会えたことは」
「そう思います。まさにあの出会いはです」
「奇跡か」
「人と人が出会うこと自体が奇跡ですが」
「その中でも御前とあの人が出会えたことはだな」
「私にとって最高の奇跡でした」 
 笑顔もだった。やはり晴れ渡っていた。
「生涯の奇跡です」
「その永遠に生きる御前のだな」
「私も何時かこの身体での生は終わります」
 それは絶対だった。肉体には限りがあるからだ。
 しかしそれは死ではなくだ。新たな生のはじまりとしてだった。
 彼は話していくのだった。兄達に。

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