井上 慶介
第二章 決心
第一話 途切れた記憶
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瀬をおびき寄せ為にな」
「……何だ、あの時邪魔してきた爺さんじゃねぇか」
「ちょっと待てよ……何でコイツをおびき寄せる必要が……?」
そこからの言葉は無かった。
しかし檜山の背に隠し持っていた銃が喜瀬に向けられ、一瞬だがこの場が凍りつく。
おびき寄せ、殺す。
体現した答えが、それだった。
理由が一切解らず困惑する井上に対し、喜瀬は何処か理解したかの様な溜息をひとつ漏らす。
「お前も、こっち側の人間って訳か」
「元、だけどな。近江の人間だ」
「なら、近江の積年の恨み返しって事か?」
「そんなんじゃあねぇよ」
2人は睨み合い、動かない。
ただ、言葉の応酬が続くばかりだ。
かやの外の井上は、ただひたすら自由を取り戻そうと縛られている手足を動かす。
気付いた喜瀬がまた溜息吐くと、井上の腕を掴み上げると檜山の目の前に投げ捨てる。
銃口がまだ下ろされていないにも関わらず、背を向けその場を去ろうとした。
「待てよ、話は……」
「コイツがいると話がしづれぇ。逃げねぇから明日またここに来いよ」
暗い闇の中に消えていった喜瀬を、2人は黙って見送る。
横目で見た檜山の表情は、不気味な程笑っていた。
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