EX回:第48話<誰かが悪役に>
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今日の演習は戦闘時の受容ダメージを計ります。お互いの艤装や身体の一部にセンサーを装着しますので遠慮なく戦って見て下さい。沈みませんし……」
それを聞いて私は、なおさら嫌な印象を受けた。
(もはや公開のイジメじゃないか? これは……)
だが軍隊だから仕方がない。私は肩をすくめた。
「不安定なので駆逐艦以外は、まだ外洋にも出られませんから経験値も維持できません。結果的に我々の研究は行き詰まってしまいました。ですから今回は渡りに船、とても貴重な機会なのです」
そう言いつつ技師は嬉しそうにスープを飲んだ。
(そりゃ、技術者は楽しいだろうけど)
聞けば聞くほど私は苦しくなってきた。他の艦娘たちは気にならないのか?
金剛姉妹と夕立はワイワイやっている。でも日向と龍田さんは既に黙ってしまった。赤城さんは……両方を見て、困った顔だ。
向かいの席の技術に詳しそうな夕張さんも同じく深刻な顔になって青葉さんに何か耳打ちをしている。
私はブルネイに話しかけた。
「こんな実験、無意味ではないか?」
「現状は、そうともいえる」
ブルネイは応える。
「今までも建造は繰り返したが軽巡や重巡、空母から戦艦と大きくなるに従って建造された艦娘の感情や身体そのものが安定しない。結局、彼女たちの最期は悲惨なのだ」
一呼吸置いて彼は続けた。
「大きい艦艇ほど建造時の出現確率が低い上、資材消費量は大きく失敗も多い。だから普段は駆逐艦でしか実験出来ない」
「実験……って」
私の言葉にブルネイは語気を強めて言った。
「美保の戦艦や空母と戦うことで、やっと安定的なデータが得られるんだ! 分かってくれ」
さらに彼は食器をガチャンと置き、こちらに向き直ると真剣な表情で語気を荒げて言った。
「俺だってこんな役は嫌だ! ……でも仕方ないだろう、誰かが悪役になって割り切ってやらないと新しい道は開かれないんだ。だから軍人は黙々と……そうだろう?」
会場は静まり返った。
私は友人の言葉に頷くだけだった。
だがハッとしたように彼は直ぐに頭を下げた。
「済まない、つい感情的になった。悪く思わないでくれ……俺もこれ以上は黙って止まっていく艦娘たちを見るのは辛い……」
「……」
私も何も言えなかった。ブルネイは既に辛いものを何度も見させられているんだ。いくら軍命とはいえ精神的に参るよな。
さすがの比叡たちも少し大人しくなって黙々と食事を続けていた。
お昼のブルネイの日差しは強くなり窓の外には椰子の木が黒いシルエットを見せていた。
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