暁 〜小説投稿サイト〜
獣篇U
4 どうせ嘘をつくなら、最後まで。
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
支度ができたので、屏風から出て、晋助にお披露目する。事務作業がなんだか忙しそうだが、ここは一つ、見てもらわねば。

_「晋助、見て見て!中々似合ってない?」

事務書類から目を離して、私を一目見ると、似合うじゃねェか、とだけ言った。なので、そりゃどうも、とだけ言うことにした。時計を見ると、待ち合わせ15分前である。

_「じゃ、晋助。私そろそろ行かなきゃだから。お仕事頑張ってね。」

と言うと、晋助(かれ)はよっこやせ、と机から立ち上がり、私を後ろから抱き締めた。

_「しばらくは寂しい思いをしそうだ。」

土壇場になって、こんなこと言う晋助(かれ)も中々可愛いものである。
ついからかってしまいたくなるのを必死でこらえて、言葉を紡ぐ。

_「晋助、大丈夫よ。ここから地球へは、どのくらいかかるかしら?」

抱き締める腕の力が強まって、返事が帰ってくる。

_「1日くらいだろうなァ。」


抱き締められている腕に、手を重ねる。

_「ちゃんとLINEするから。ね?」


渋々離してくれた。
達者でな、のドアの前まで送ってくれた。そういうところは紳士なのになァ…。

時計を見ると、集合5分前になっていた。急がねば。



第三ゲート(通称:ターミナル)を目指して走ると、ゲートの前に夜兎の皆様が揃っていた。唯一、神威を除いて。一応皆に声をかける。

_「皆様、お待たせ致しました。あら、神威殿はどちらにおいでで?まだなのですか?」

_「零杏様、オレ…いや私は第七師団の云業と言う者です。どうぞ、よろしくお願いします。団長はまだおいでではありません。」

_「そうだったのですか。てっきりもう揃っているか、と思っておりましたもので。」


周りを見ていた阿伏兎が声をあげる。

_「あ、団長が来たぜ。ったーく、あのスットコドッコイ!」


阿伏兎の視線の先に目をやると、あの神威がご丁寧に抹茶ラテを持って、こちらに向かってきていた。一瞬、普通ではありえない光景に絶句した。

_「あァ〜、お待たせ〜。さて、行こうか。あ、ハイこれ、零杏。」

と、抹茶ラテを渡される。
ありがとう、と受け取った。




_「どうせ、地球へ行くまでには1日くらいかかるから、ゆっくりしててネ。」

と案内されたのは、いつもの大きな春雨の船ではなく、ふたまわりほど規模の小さい船だった。とは言っても、大きさ的には鬼兵隊の船と対して変わらない感じである。
とりあえず指定された席に座って、ラテをいただくことにしたが、案の定睡眠薬と、何か怪しげな薬の臭いがしたので、飲むふりをして1滴だけ舐めた。やはり、感覚は正しかった。
まさか神威のやつ、私を眠らせた
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ