16話→そして、世界は間違える
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ル等の攻撃が日本に向かっている事を示すアラートが『連続』して携帯に鳴り響き、町内はパニック状態。
あらかじめ合流していた山田家でこの騒ぎが収まるまで待つものの、テレビでは自宅から出ないようにと壊れたラジオのように繰り返し言うだけで、収まる気配はない。
ネットでは湾岸地帯でミサイルを撃つ戦艦や戦闘機の噂が流れるものの、何故か証拠となる写真がサーバーにアップできないなど、混乱が加速していた。
分からない、何もかも。
だからこそ、このタイミングでかかって来た、兄の電話に、蜘蛛の糸のようにすがる。
「兄ちゃん、俺はどうすれば良いの?何をすればいい?」
訳の分からない状態で、何も出来ないというのは、恐怖や心配という感情を増大させる。
何でも良い。何か兄からやることを貰って、集中していたかった。
「…………ふう。悪い、息がやっと整った。良いか、よく聞くんだ一夏。やってほしい事は3つ」
「うん!」
頷きながらメモと鉛筆を持つ。
兄の言葉を、願いを聞き逃さないために。
「一つ、俺の部屋を開けて、引き出しにある二つの手紙を持ち出す。そして、お前宛の手紙を読め。二つ、もうひとつを真耶に渡せ。最後に…………千冬をしばらく頼む」
「えっ!?兄貴…………兄貴!」
もう、電話は切れていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「はぁっ!またあの夢かよ」
被った布団を上半身で跳ね上げて、一夏は起きた。
事件から数年たっても、消えないあの日の記憶。
それは友人から能天気と言われる一夏を、未だに過去に縛りつけていた。
「兄貴…………」
枕横にある携帯を開く。
そこには、幼い自分を抱える太郎と、まんざらでもなさそうに腰を抱かれる姉さんがいた。
「どこに居るんだよ…………」
行方がしれない兄を心配する声が、無意識に口から漏れた。
その瞬間、携帯に着信がある。
ショートメールか、誰からだ。
何気なく、携帯を操作した一夏は、目を見開いた。
この番号に覚えがある。
それはそうだ、いつ帰って来ても大丈夫なように、その番号の料金を払い続ける手続きをしたのは自分、なのだから。
そこには、こう書かれていた。
【至急、IS学園に来い。山田太郎】
【白騎士事件】より、連絡の取れなかった兄からの、久しぶりの連絡に、一夏は何の疑いもなく、喜んだ。
その数日後、自らの身に何が起きるのか、未だ分からぬまま。
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