銀河動乱
第六艦隊
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「黙っておれ!」
罵声が響き、反射的に掌が動いた。
麻痺銃《パラライザー》を握り、安全装置を解除。
ムーア提督が震え、引き攣った表情の儘で倒れる。
続いて首席幕僚も撃ち、意識を奪う。
「ラップ少佐!
この非常時に、何て事を!!」
『ペルガモン』艦橋に漸く、声が響いた。
振り向き、背後に佇む幕僚の群を眺める。
「黙って、第六艦隊の潰滅を見守る気か?
手段を選んでいる余裕は無い、職責を果たせ」
全員の瞳が泳ぎ、足許に視線を逸らす。
互いに顔色を窺い、発言する者は無い。
通信盤に駆け寄り、艦外通信のスイッチを押す。
邪魔する者は無く、マイクが青緑色に輝く。
発声前に呼吸を整え、天井パネルを仰ぎ見る。
広角モニター映像、光の脈動が現実を映す。
戦術コンピュータ演算結果投影図、簡易モデル表示盤は更に単純。
右後背の敵が艦隊を蹂躙、恐慌状態に陥れつつある。
「全艦隊に告げる。
提督は負傷、ラップ少佐に指揮を命じた。
生還したい者は、深呼吸して精神を落ち着かせろ。
私の指示に従う方が、生き残る確率は高い。
全艦長は周囲味方艦の進行方向、速力差、距離を確認せよ。
第六艦隊は時計回り、右旋回軌道で敵の後背を衝く。
低速または損傷の艦は、発光信号器を明滅させろ。
他の艦は衝突、接触を避け、1時の方角に転針。
敵も急角度で転針、第六艦隊の頭を抑える確率が高い。
戦闘艇は出すな、右砲戦用意!」
艦外通信のスイッチを切り、振り返る。
「敵の指揮官は優秀だ、今の通信が傍受されない筈も無い。
新たな策を選び、意表を突くだろう。
次の一手を読まねばならん、私は観察に専念する。
第四艦隊の連絡が絶えた後、8時間弱が既に経った。
右旋回運動から直進に移り、第二艦隊と邂逅を試みる。
敵の傍受を避ける為、短距離通信は軌道変更5秒前。
提督の意識回復、指揮権返還は艦隊の潰滅を意味する。
判断は貴官達に委ねる、首席幕僚にも気を配れ」
予想通り、数千隻が動く。
僅かに期待した衝突、接触の閃光は無い。
指揮官は勇将、ファーレンハイト提督だろう。
急激な軌道変更に耐え、第六艦隊の前を塞ぐ。
ワルキューレ運用術の達人、メルカッツ提督の追撃も厳しい。
単独で膠着状態に持ち込み、持久戦は無理だ。
大胆な強襲、痛撃の連鎖を覆す勝算は無い。
「全艦に告ぐ、第二艦隊から連絡が届いた。
真正面の敵を、背後から襲う。
挟撃だ、直進せよ!」
「全砲門、解放射撃!
正確な照準は要らん、撃ち捲れ!!」
超光速通信は通じず、第二艦隊からの連絡も無い。
此の儘では、
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ