巻ノ百二十六 軍議その十
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それではどうしようもなかった、それでだった。
茶々は一同にだ、強い声で言った。
「外に出る必要はない」
「それではですか」
「篭城してじゃ」
この大坂城にと大野にも言う。
「そのうえで敵が諦めるのを待つ、兵糧は充分になるな」
「はい、それは」
大野は正直に答えた。
「十万の兵が一年おっても」
「ではじゃ」
茶々は大野のその言葉を受けてさらに言った。
「篭城せよ」
「外に攻めずにですか」
「攻めずとも勝てるではないか」
大坂城は決して陥ちないからというのだ。
「そうすれば幕府も痺れを切らしまた諸大名も大坂城が決して陥ちぬとあらためて知れば」
「豊臣は負けぬとですか」
「思い知ってじゃ」
こう幸村にも強く言うのだった。
「再び従うわ」
「だからなのですか」
「お主の考えは余計じゃ」
幸村に頭から言い切った。
「大坂方は守っていてじゃ」
「そうして敵が退くのを待ち」
「後は諸大名が従ってくれるわ」
「左様ですか」
「上様もそれでよいであろう」
秀頼を天下人としてこう言った。
「そうじゃな」
「母上はそう言われますか」
「そうじゃ」
その秀頼にも完全に上から言う。
「異存はあるか、それは」
「それは」
「ないであろう」
「母上が言われるなら」
こう言うしかなかった、秀頼も。身体は茶々より遥かに大きいというのに全くそうは見えなかった有様だった。
そして茶々は今度は執権の大野にだ、こう問うた。
「修理、そなたもじゃな」
「その様にすればですか」
「勝てるな」
「・・・・・・・・・」
大野は答えられなかった、茶々の言うことには幼い頃からだった。それでどうしても言えず執権の彼までそうでだ。
そのうえでだ、諸将にも問うたが。
もう誰も言えなかった、そしてこれでだった。
茶々の言う通りに篭城策となった、誰も外に出ることはなくなった。だがこの事態に後藤は幸村に軍議の後で話した。
「戦の仕方としましては」
「ここで篭城はですな」
「下の下、いや」
後藤はこの言葉をさらに出した。
「それ以下かと」
「問題外だと」
「ここで篭城なぞすれば」
それこそというのだ。
「囲まれまする」
「それも四方から完全に」
「そして策も仕掛け放題ですぞ」
城の外からというのだ。
「内応者だの城を出る者だのが出て」
「士気は落ちますな」
「そして大坂城の堀は広く深く」
「兵も渡れませぬが」
「そうした問題ではござらぬ」
後藤は大坂城のその堀、大坂城の守りの固さを作っているものの一つについても幸村に対して話した。
「あの堀なら鉄砲も弓矢も届かず」
「堀の向こうから放っても」
「大砲を撃とうとも」
例えこれを使おうともだ。
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