暁 〜小説投稿サイト〜
【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
番外編
【番外編】お花見
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てもいい。お前は近いうちに一日だけ休みにしろ。魔王命令だ。いいな?」
「はあ。んじゃお言葉に甘えて」

 実はルーカスにも、「そろそろ休みを取るように」と言われていた。気が進むわけではないが、言われたとおり休みを入れることにしよう。

「で、マコト」
「はい」
「その休みの日、何か企画しろ」
「はい?」
「わたしが参加できるもので頼むぞ」
「……」

 なんか妙なこと言い出すなと思ったら、そういうことだったのか。暇なのか?
 ということで、適当に何か考えることにした。



 ***



 冬の終わりなので、気温が高いわけではない。
 だが、いつも通りの、良く晴れた日――。

 ぼくは魔王、ルーカス、メイド長シルビアとともに、ルーカス邸の庭にある木の下で、同じ敷物の上に座っていた。

 その敷物、さほど大きくはない。料理が詰められた箱が中央に置かれ、それを四人が取り囲んでちょうどいいサイズである。
 少し離れて、もう二つ敷物が置かれているが、そちらは大きい。上にはやはり料理が入っている箱と、それを囲むように、魔王の護衛の魔族がたくさん座っていた。

「マコト。この企画はちょっと地味じゃないか?」
「文句言うなら自分で考えてくださいよ……」
「何だとこら」
「イタタタ」

 ぼくの髪を右手で引っ張ってくる魔王。空いている左手のほうには、パンに肉や野菜が挟まれているもの――ぼくがメイド長と一緒に作ったサンドイッチ――が、握られていた。



 そう。苦し紛れに企画したのは、「庭園での花見」だった。

 ルーカスの自宅には、「立派な日本庭園」が存在する。手入れが面倒なうえ、乾いた魔国の気候にはとても合っていないため、知る限りでは王都唯一だ。

 魔国の王都の冬――当然のことながら初めて経験したが、日本ほどグッと気温が下がる感じはなかった。だが、この庭園に生えている木の中で、葉を全部落としたものがあったのは気になっていた。
 すぐ近くまで見に行ったこともある。そのときは、鱗片に覆われた冬芽が確認できた。

 ……もしかしたら?

 そんなぼくの予想は、当たっていた。
 現在、桜のような花が見事に咲いている。それは、マッサージ学校時代、沖縄から都内に出てきていた友人が写真で見せてくれた、「カンヒザクラ」という桜によく似ていた。日本で見慣れていたソメイヨシノとは花の形が少し違い、色も濃いピンクだ。

 これは見事だと思ったため、ルーカスに相談の上、今回の企画に至ったものである。



「ふふふ、魔王様。これは一見すると地味なようですが、実は非常に大きな意味を持った娯楽だと思われます」

 ルーカスが笑いながらそう言って、隣にいるメイド長シルビアに右手を伸ばす
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