春の訪れは揚げ油の香りと共に?・その2
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
になるぞ。
「那智、卵液が出来たら鶏肉を浸してくれ。5分位で良い」
その間に油を200℃まで温めておく。卵液が肉に十分馴染んだら、粉をまぶす。余分な粉ははたき落として、温まった油に投入していく。
揚げ時間は骨の有無なんかによっても変わってくるが、焦がさないように引っくり返しながら12〜15分は揚げるように。衣が暗めの茶色になるくらいまで揚げないと、中まで火がとおっていなかったりするからな(特に骨付き)。
揚がったかどうかの目安としては、肉汁が揚げ油に溢れ出して『ジュワーッ』と音を立て始めたらそろそろだ。
「こ、こんな感じか?」
「うん、今度は良さそうだな」
焦げすぎている訳でもなく、美味そうだ。火の通り具合のチェックも兼ねて1つ摘まみ食いしてみる。ザクッという歯応えのある衣の中から、ジューシーな鶏肉が顔を出す。味が濃い目の衣と相俟って、酒の進む味に仕上がっている。生焼けの箇所も無いしバッチリだ。
「うん、こりゃ美味い」
どんどん揚げて、店内にいた連中に配っていく。味が濃い目のフライドチキンに酒。合わない道理がない。揚げて配る側から消えていき、酒のお代わりの大合唱が響く。
「うむ、これは美味いな」
那智も1本手に取り、かぶりついている。
「そういやぁ、那智は結婚を前提とした付き合いをするつもりなんだよな?」
「う、うむ。まぁ、そうなるな」
「そうか。なら俺からのアドバイスだ。家事は程よく手抜きにしとけ」
「な、何故だ!?」
これはウチのお袋の受け売りだがな?付き合い始めや結婚当初に張り切り過ぎていつも以上に家事を完璧にこなすと、それが基準点になっちまう。そこからグレードを落とせなくなっちまうんだな。もしもグレードを落とせば『手抜きをしてる』とか『昔はこんなに雑じゃなかった』と言われて気分も悪い。
だから、ある程度の手抜きをして余力を残しておけって事。基準点から上に行く余地があれば、自分も相手も心の余裕が出来る。ギクシャクしない。
「な、成る程……含蓄のある言葉だ」
「まぁ、いつもの干物女全開でいたら彼氏にも愛想尽かされるかもな?」
そう言って俺がニヤリと笑うと、
「そ、それは幾らなんでも失礼じゃないか!?」
那智は真っ赤になって抗議してきた。いや、さすがに休みの日に芋ジャー着てゴロゴロはダメだろ。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ