406部分:第三十一話 夏の黄金その十
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第三十一話 夏の黄金その十
「では今度はです」
「お花ですね」
「今度の花は薔薇です」
「薔薇をですか」
「薔薇は咲く時の長い花ですが」
華やかなだけでなくだ。そうでもあるのだ。その薔薇についての話だった。
「秋にはとりわけ奇麗に思えます」
「秋にこそですね」
「はい。秋の薔薇を見に行きませんか」
「私は昔から薔薇も好きですが」
その薔薇のことを想いながらだ。真理は話していく。
「ですが何時の薔薇が奇麗かは」
「御考えになられたことはなかったですか」
「はい」
そうだったというのだ。
「そこまでは」
「では今ここで、ですl
「そのことを考えながらですね」
「薔薇を見ましょう」
「そうさせてもらいます」
「この子も連れて」
ここでもだ。義正は我が子を見た。
「そうして行きましょう」
「薔薇を見に」
「薔薇の園を知っています」
ただ薔薇を見るだけでなくだ。それこそ園になっている場所だというのだ。
「そこに行きましょう」
「薔薇の園ですか」
「何度かそうした場所には行かれたことがありますね」
「はい」
その通りだとだ。真理も微笑んで答える。
「好きですから」
「それなら余計にです」
「薔薇の園に」
「三人で行きましょう」
こうしてだった。三人で薔薇の園に行くことになった。その園はだ。
神戸にあった。海が見える緑の園の中に薔薇達が咲き誇っている。
紅のものもあれば白いものもあり黄色や桃色、紫もある。薔薇といってもだった。
その花達の色は色々だった。その花達を見てだ。
真理はだ。目を細めさせて義正に言った。背中にはやはり義幸がいる。
「至るところにですね」
「見事ですね」
「はい、見事です」
まさにそうだとだ。真理は答えた。
「ここまで咲き誇っているのは」
「見られたことは」
「なかったです」
だから余計にだというのだ。
「百花繚乱ですね」
「薔薇だけにしてもですね」
「はい、百花です」
まさにそれだというのだ。
「ここまでありますと」
「特にどの色が宜しいでしょうか」
「どの薔薇がですか」
「はい、御気に召されたでしょうか」
「どの色もです」
一つに絞れない、これが真理の返答だった。
「そんなことはとても」
「絞れませんか」
「どの色の薔薇達もあまりに奇麗なので」
それ故にだというのだ。
「ですから。それはとても」
「そうですか。どの色もですね」
「紅だけ、白だけならこうは想わなかったです」
「しかし全ての色があれば」
「どの色も奇麗ですね」
「はい」
真理は微笑んで義正に述べた。
「一つ一つが。全て」
「その薔薇の一輪一輪がですね」
「とても奇麗に見えます」
「薔薇は一輪よりも」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ