第五章 じょじょじょ
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「あああああああああああ!」
まるで断末魔のような凄まじい悲鳴をあげながら、山田定夫は腕を振り全力で走っている。
魂と、お腹の肉を、ぶるぶる震わせながら、他の生徒らの視線も気にしない、なりふり構わぬ全力で。
トゲリンと八王子、二人の親友とともに。
学校の廊下を、ただ全力で。
「な、なんで逃げるんですかあ!」
という背後からの声に、定夫は肩とお腹をびっくんぶるんっと震わせた。
女子生徒が、追い掛けてきているのだ。
殺されるっ。
きっと、捕まったら殺される。
もしくは、辱められる。一生消えない心の傷をつけられる。
これまでは陰からひそひそと、クズとか、死ねばいいとかいわれたり、遠くから石を投げつけられるとか、そんな程度だった。
正面きって堂々と声を掛けられたり、追い掛けられたことなどはなかった。
きっと、女子たちの総攻撃が始まったんだ。
もう我慢できない、オタを駆逐しろ、殺戮しろ、撲滅せよ、と。
そうに違いない。
ということは、捕まったらきっと殺される。
殺される。
殺される。
まだ、
まだっ、
まだ、「トーテムキライザー」の第二部も観ていないのにっ!
校内で女子生徒に話し掛けられたことのない定夫は、すっかりパニック状態。パニック状態ゆえに、この通り思考の悪循環に陥っていた。
生命の危機に、必死に走っていた。
両隣のトゲリンと八王子も恐怖に泣き出しそうな顔。おそらく定夫と同じような心理状態なのだろう。
「うああああああああ」
「ああああ」
「ひぃえええええ」
中央公園での発声練習のように、いや、それ以上に、実に情けない声をあげ、泣き出しそうな顔で、三人は全力で走る。
自由を求めて。
生を求めて。
しかし、そうはさせまいと、
女子が、
女子が、追い掛けてくる。
「なんで逃げるんですかあ。……あ、あなたたちがっ、一体なにをしたっていうんですかあ」
普通ならば、「わたしがなにをしたんですか」だろう。気が狂っているのか、あの女子は。
きっとおれたちオタへの総攻撃において、鉄砲玉として一番ヘンな女子が選ばれたのだ。
つまり、捕まったらなにをされるか分からない。
つまり、絶対に捕まるわけにはいかない。
ライフ オア デッド。
逃げのびねば、生はない。
「むああああああああああ!」
ブレーキかけずコーナリング、定夫たちは運動ダメなくせにこういう時だけ神のごときの高等テクニックを見せ、上履きのままで玄関から外へと飛び出した。
飛び出し、そのまま外を走り続ける。
レンガ道、そして校
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