第五章 じょじょじょ
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「考えてみて下さい。世の中には同じような性格で、似た感じの容姿の人はいっぱいいます。声帯も同じようなものだとして、ならば声も同じはず、と思いますか?」
八王子は、首をぷるぷる横に振った。
「そうですね。喋り方の癖、喉の使い方つまりどこから声を出すか、人それぞれ違いますよね。同じ声帯で同じ性格であっても、高く喋る人、ぐっと押さえた低い越えを出す人、ゆっくり喋る人、喉にこもるような発声をする人、お腹から突き上げるように声を出す人、逆に全然腹筋を使ってなさそうな人」
「分かったような」
定夫。
「分からないような」
トゲリン。
「お二人。レンドルさんと、トゲリンさんって、声の感じはまったく違いますよね。でも、たぶん声帯は似てますよ。声の出し方が違っているだけで」
「えひ?」
そう、なのか?
そんな似てないと思うが。
いや、まったく似てない。
でも、達人がいうのだから……
似てないとは思うけど、
ちょっと、試してみるか。
定夫は、すぶぶぶっと息を吸い込むと、
「おっすオラトゲリン! 今日もコミケにバイセコー!」
トゲリンのニチョネチャ声を真似して叫んでみた。なお台詞自体にはなんの意味もない。
「確かに、そっくりだ」
と驚いている八王子の声を掻き消すように、
「失敬な! そんなニチニチした声などしていないでござる! しからば、それがしも……アニメ好きなだけでぇ、石ぃぶつけてくんなよう」
「そこまで暗い喋り方などしていないっ!」
「でも、似てるなあ」
そんな三人に、敦子はにっこり微笑んで、
「分かりました? 声は、声帯だけじゃないということなんです。周囲環境、歴史、縦の繋がり横の繋がりで、いくらでも変わってくる」
「いや、おみそれしたでござる。あれ、違うな」
八王子が、トゲリンのニチョニチョ声を真似しようとしてみるが、まったく似ていなかった。
「単なるこだわりかも知れませんが。あまりに細かいところまで意識しても、実際の発声にまったく影響はないかも知れない。でも、常にたくさんのことをイメージしておくことで、演じる際に無意識に滲み出てくるものが絶対あるはずなんです。と、あたしは信じています。……では、とりあえず、キャラごとにいくつかの声を考えて、それぞれを当ててみましょうか。まずは、主人公の台詞ですが……」
と、敦子はあらためて台本を開きめくって、声の確認に使えそうな台詞を探し始める。
「つっ、ツンデレで」
ごくり唾を飲みながら、個人的な趣向性癖を解放するトゲリンであった。
隣でも、ごくり唾を飲む音。
定夫である。
身体を震わせながら、両の拳をぎゅっと握り締めている。
これ
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