第五章 じょじょじょ
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庭へ。
神の高等テクニックを披露しようとも、いかんせん元の体力がない。さしたる距離など走っていないというのに、彼らはみな、すっかりバテバテで、ゴール直前のマラソン選手のような苦悶の顔になっていた。
はひい、はひい、と犬の咳のような呼気を吐き出しながら、なんとか前へ進む定夫。
惨めさと死への恐怖にすっかり涙目であった。
背後からぱたぱたと足音。
「ちょっとお話したいだけなんですうう!」
女子がなんかわけの分からないこといってる。
「がああああああああ」
「あああああ」
「ひいいいいいいい」
腕をぶんぶん振り(その割に速度は出ていないが)、必死に走る三人。
「待ってくださあい!」
背後から、女子生徒がぴったりついてくる。
捕まって、たまるか。
おれは、
おれたちは……
生きる!
定夫は、残る力を振り絞って、走る速度を上げた。
と、その瞬間、
激しく転倒していた。
三人、もつれあうように、どどっと。
砂場にさしかかっていたことに気付かずに、足を取られてしまったのだ。
口の中に、はねた砂が入った。
昨日降った雨のために濡れていた重い砂が、水底の藻のように彼らの身体をからめとった。
「うぐううう」
「まあああ!」
三人は、みな必死の形相で、這いつくばり、
からみあうように。
押しのけ合うように、
神にすがるように手を伸ばし、
身体をくねらせ、
なおも逃げ、進む。
いや、進もうと頑張っているだけで、湿った砂をただ手でかいているだけ。
砂まみれ、泥まみれの、実に酷い有様であった。
這いつくばったまま、顔を起こして後ろを振り返った定夫は、ひっ、と息を飲んだ。
余裕で追いついた女子生徒が、彼らのすぐ足元に立っていたのである。
定夫は、涙をぼろぼろ流し、泣いていた。
「もう、もう勘弁してくださあああい!」
泣き叫びながら、なおも砂をじゃりじゃりかいて進もうとする、抗おうとする。
定夫だけではない。
トゲリン、八王子、
我助かろうと三人は押しのけ合いながら、涙を流し、絶叫し、手で、足で、砂をかき続ける。
まさに阿鼻叫喚の地獄絵図であった。
「助けてくださあい!」
「トーテムキライザーーー!」
泣き叫ぶ八王子とトゲリン。
「たっ、助けるって、なにをですか? そもそも、どうして逃げるんですかあ!」
女子も、少し息が上がってしまっているのか、それとも単にイラついているのか、興奮したような声を出した。
「じょ、じょん、じょじょっ、じょしっ、女子にっ、ははぱぱぱぱぱなしかけられると思ってなかったむでえええ!」
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