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儚き想い、されど永遠の想い
400部分:第三十一話 夏の黄金その四

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第三十一話 夏の黄金その四

「その鹿鳴館もまた」
「はい、日本文化でした」
 そうだったとだ。義正は真理に話していく。
「あれもまたです」
「そうだったのですか」
「私も最初は違うと思っていました」
 義正もだ。鹿鳴館に対して最初は否定的だったというのだ。
「西洋を学ぶのはいいですが」
「それでもですね」
「あまりにも過度に。媚びるまでというのは」
「よくはないと」
「そう思っていました。ですが」
 鹿鳴館の真実を知っていくうちにだ。考えを変えていってだというのだ。
「あの鹿鳴館もまたです」
「文化だったのですね」
「そのことがわかりました」
 そうなったというのだ。
「ようやくです」
「ではひまわりも」
「元々は日本にはありませんでした」
「それでもですね」
「思えば。梅も」
 二人が三月に観ただ。その花もだというのだ。
「本来は日本にはありませんでした」
「支那の花でしたね」
「そうです。今ではあの国の国花でもありますし」
「ですが今はですね」
「我が国の中に入っていますね」
「そうですね。完全に」
「ですからひまわりも」
 ひいてはだ。二人が見ているその花もだというのだ。
「我が国の中で」
「我が国の花になりますね」
「はい、既になっているかも知れませんが」
 ひまわりを見ながら。話していってだった。
 彼はだ。今度はだ。こう言うのだった。
「それでひまわりですが」
「はい」
「漢字では向日葵と書きます」
 こう言ってだ。その字を見せたのである。
「日に向かう葵と」
「日に向かうですね」
「やはり太陽の花なのです」
「そうなのですね。お日様の」
 その花だと。真理も話した。
「まさにそうですね」
「八月の太陽は酷でもありますが」
「暑い。それでもですね」
「こうした黄金ももたらせてくれます」
「黄金。花の黄金を」
「そうです。ではもう少し御覧になられますか」
「そうさせてもらいたいです」
 微笑みだ。真理は義正に答えた。
「ひまわり。向日葵ですね」
「はい、そう書きます」
「その向日葵をもう少し見ていたいです」
「では私も」
「義正さんも」
「義幸にも見せてあげましょう」
 二人だけでなくだ。二人の子供にもだというのだ。
「彼にもまた」
「そうですね。この子にも向日葵を」
 今義幸は真理の背で気持ちよさそうに寝ていた。母のその背で。
 今は見えている筈がない。だがそれでもだった。
「感じられるのですから」
「心で見てもらう」
「そうしてもらいましょう」
 その為にだった。彼にもというのだ。そうしてこの日は向日葵を見たのだった。

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