第一章
[2]次話
離婚してから
カトリックはおおよそにして離婚が非情に難しい宗教である、それでミラノで宝石商を営んでいるロレンツォとカテリーナのコラッロ夫婦もかなり揉めた。
離婚の理由は性格の不一致だ、結婚した時はそんな感覚は両方になかったがそれでもだった。
結婚して三十年以上経ち子供達が全員独立してお互い五十歳を超えてからだった。どうにもだった。
二人だけの時に戻ってだ、まずは夫のロレンツォが数十年来の友人のジェンマ=スフィーダに言ったのだった。
「喧嘩をしている訳じゃないんだよ」
「それでもかい」
「うん、何かね」
「奥さんとはかい」
「どうも趣味や好みが何かと違っていてね」
「相性が合わなくなった」
「そうなってきた感じがしてね」
その高い鼻に黒いやや薄くなった髪の彫のある目の顔で言う、背は一七二程で身体はすらりとしている。面長で顔は奇麗に剃っている。服装は実に洒落ている。
「だからだよ」
「離婚をするのかい」
「二人で話をしてね」
そしてというのだ。
「決めたよ」
「離婚の手続きは面倒だよ」
ジェンマは難しい顔で言った、愛嬌のある太った顔と身体の小男で髪の毛はもうかなりなくなっていて頭頂部が光っている。
「わかっているね」
「イタリアはね」
「それでもいいんだね」
「それも覚悟のうえでだよ」
ロレンツォの返事は変わらなかった。
「僕としてもね」
「そうなのか」
「うん、そしてね」
「実際にだね」
「離婚するよ、もう手続きもね」
イタリアのカトリックそれもローマ=カトリック教会のお膝元であるが故にやけに複雑で面倒なそれもだ。
「あと少しだよ」
「本気か」
「お互いにね」
「君達は長い間夫婦だったがね」
「長くてもね」
それでもという返事だった。
「それでもだよ」
「性格がだね」
「合わなくなってきてね」
またこう言うのだった。
「だからね」
「それでか」
「別れるんだ」
「やれやれだね、私としては」
ジェンマは少し溜息を出してからロレンツォに自分の結婚への考えを話した。
「カトリックの信者としては」
「結婚したらだね」
「そう、神が結び付けてくれたのだから」
それ故にというのだ。
「もう一生添い遂げるべきだけれど」
「それは僕もね」
「思っていたんだね」
「最近までそう思っていたよ」
実際にというのだ。
「もう一生ね」
「カテリーナとだね」
「一緒にいたいと思っていたよ」
「そうなんだね」
「心からね、しかしね」
それでもというのだった。
「それが出来なくなったんだ」
「お互いに」
「だから残念だけれど」
「別れるんだね」
「そうするよ」
こうジェンマに言った、そしてだった。
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