第四章
[8]前話
「私伊勢海老食べたことあるけれど同じ味よ」
「私もそうよ」
「そうよね、伊勢海老よね」
彩花は友人達にも言った。
「これって」
「スープだけれどね」
「お味噌汁じゃなくて」
「けれどね」
「伊勢海老の味よね」
「どんな味かって思ったら」
早百合がまた言った。
「確かに美味しいけれど」
「伊勢海老の味で」
「どんな味がするのかしらって思ったら」
「伊勢海老の味ね」
「ああ。それはね」
どうしてオマール海老が伊勢海老と同じ味がするのかということをだ、姉妹の父が穏やかな笑顔で話した。
「同じ仲間だからだよ」
「オマール海老と伊勢海老は」
「だからなの」
「そうだ、同じ海老の仲間だからな」
こう自分の妹達に話した、勿論彩花の友人達にもだ。
「それでなんだ」
「同じ味がするのね」
「伊勢海老と」
「そうなのね」
「そうだよ、海老だからね」
それでというのだ。
「そうなんだ」
「どんな味かしらって思ったら」
彩花は今度はオマール海老を焼いたものを食べつつ父に応えた、そちらも伊勢海老と同じ味を感じていた。
「伊勢海老の味だったのね」
「実際は多少違うけれどな」
「同じ味するけれど」
「そうよね」
「伊勢海老とね」
満里奈と美奈子はその彩花に同意だった。
「幾ら食べてもね」
「そう思うけれど」
「似ているのは事実だからな」
父もこのことは否定出来なかった、だからこう言った。
「まあそれでも美味しいだろ」
「うん、美味しいことは美味しいわ」
「とてもね」
「じゃあ皆で楽しく食べような」
「沢山あるからね」
母も笑顔で言ってきた。
「だから皆でね」
「うん、食べるわ」
「皆でね」
こう答えてだ、そしてだった。
彩花達はオマール海老を食べていった、それは確かに美味かったが彼女達が思っている味ではなかった。だがこれは彩花の確かな思い出になって。
成長し結婚し子供が出来た時にだ、夫と共にその息子をレストランに連れて行ってオマール海老の料理を家族で食べたが。
息子がオマール海老は伊勢海老なのと食べてから言ったのを聞いてだ、彩花は笑って息子にこう言った。
「お母さんも昔そう思ったわ」
「そうなの?」
「伊勢海老とオマール海老は同じが味がするって」
「けれど違うんだ」
「そうなの、これがね」
こう言うのだった、自分と同じことを言った息子に。そして後で早百合や今も付き合いがある満里奈や美奈子にその話をして自分の子供もそれぞれそう言ったと笑って話した。成長して奇麗になったその顔で。
夢にまで見たが 完
2017・9・15
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