第六章
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「それは」
「そうなの?」
「わかるわ、その人のこともね」
「そうなの」
「ええ、わかる時が来るから」
「そんなものなの」
「そうよ、あんた空手はじめてよかったわね」
こうも言った母だった。
「空手で身体強くなっただけでなくてね」
「峯川さんのお話も聞けて?」
「それでね」
「そうなの」
「本当の強さがわかる下地が揃ったじゃない」
「そうなのかしら」
「だったわ絶対にわかる時が来るから」
それでというのだ。
「後はそのことがわかるまであんたなりに頑張りなさい」
「空手を」
「そうしなさい、いいわね」
「何かよくわからないけれど」
倫子は母に首を傾げさせつつ返した、本当にわかっていない顔だ。
「じゃあ空手は続けていくわね」
「身体を鍛えること、あとね」
「あと?」
「人の道に外れることはね」
「いじめとかカツアゲとか万引きは」
「そうしたことはしないで」
そうしていってというのだ。
「稽古をしていくのよ」
「わかったわ」
こう話してだ、そのうえでだった。
倫子は空手の稽古を続けていった、初段から二段になり高校でも空手を続けたが。
ある日空手の稽古で左手を骨折してギプスが取れてからリハビリを行った、その時に遂にだった。
ギプスをしていたので長い間動かしていなかった手を動かして痛く辛くてだ、それでだった。
母にだ、こう言った。
「リハビリ、辛いわ」
「そうでしょ」
リハビリを見守る母もこう返した。
「痛いしね」
「かなりね」
「苦しいわよね」
「嫌になるわ、それでね」
「それで?」
「いや、中学の時に聞いたけれど」
こう前置きして母に話した。
「ほら、峯川さんって人」
「あの人のことね」
「あの人全身そうだったのよね」
「寝たきりになるかもって言われていたのよね」
「それがね」
「普通に歩ける様になっていて」
「だからね」
その話を思い出してというのだ。
「それまで凄く辛くて痛くて苦労したってね」
「そのお話思い出したのね」
「うん」
その通りという返事だった。
「今へ」
「今のあんたもしんどいでしょ」
「かなり」
そのリハビリはだ、中々動けないもどかしさが辛くそして痛い、こんなことはしたくないと思ってリハビリの時間が来るのが怖くなる程辛い。
「実際にね」
「そうよね、それがね」
「あの人は身体全体だったから」
「ずっと辛くて痛くて苦しかったのよ」
「比べものにならないわよね」
型てだけの自分とは、というのだ。
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