九 傀儡師
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「―――とっくの昔に…引退したと聞いていたんだがな…」
肩を落とすだけでなく、全身で溜息をつく。
我愛羅を使い、九尾の人柱力を誘い出したデイダラを洞窟の中から睨んだサソリは、改めて懐かしい顔を見据えた。
サソリの実の祖母であるチヨ。
引退の身故、戦線には出てこないだろうと、考えていたチヨとまさかの再会を果たし、聊か動揺していたものの、その顔に感情めいたモノなど微塵も浮かばせない。
表情に一切出さないサソリの強い眼光に、いのの足が無意識に後退した。
己より遥かに、実戦経験の差と人を殺してきた数が桁違いだと悟る。
「急に孫の顔が見たくなってな…」
懐かしげに眼を細めたチヨは、ゆっくり前へ進み出る。
たじろぐいのに「怖れるな。このワシに任せろ」と、力強く頷いてみせる。
老いて猶、頼りになるその背中を、いのは尊敬の意を込めて見つめた。
サソリと対峙したチヨがおもむろにクナイを取り出す。
ワイヤーで繋がれているかのような九本のクナイ。それらは重力に逆らい、宙に漂っている。
それらをチヨは一斉に解き放った。
引き寄せられるようにクナイはサソリ目掛けて飛び掛かる。
軌道を読んで、サソリはそのクナイを難なく全て叩き落した。
「俺に盾突こうってなら仕方ねぇ…」
面倒くさげに溜息を再度ついて、サソリは自ら服を破いてみせる。以前とは異なる形態を見せつけ、サソリは尾で地面を強かに叩いた。
「そこの餓鬼と一緒に俺のコレクションにしてやろう、チヨ婆よ」
昔の自分では無いと、己の力量を示すかのように。
粘土の巨鳥が翼を広げる。
空で旋回する鳥に乗ったデイダラは、眼下の二人を見下ろした。巨鳥の口がパカリと開き、我愛羅の足が垣間見える。
我愛羅を囮に、九尾の人柱力を誘い出す事に成功したデイダラは、自分を追ってくるナルを満足げに見下ろし、直後、チッと舌打ちした。
九尾の人柱力であるナルだけでなく、はたけカカシまで追い駆けてきた事に、面倒くさげに溜息をつく。
洞窟内に視線をやって、デイダラは「いいのか?俺なんか相手にしてて」とカカシに向かって、諭すような物言いで注意した。
「写輪眼のカカシ先生よぉ…うん?」
ナルと共に洞窟から出てきたカカシ。チヨといのを洞窟に残して来た彼を非難する。
「言っちゃぁ、なんだがサソリの旦那は俺より強いぜ?」
たぶんな、と付け加えつつ、デイダラは洞窟にいるサソリの強さを暗に指摘する。
チヨといの。二人だけでは到底太刀打ち出来ぬ相手だと。
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