第83話 無邪気な子供は時々残酷な事を楽しむ事もある その2
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彼女が名乗っていた名を呼んだ。
紅夜叉―――
この名を知る者は数少なく、その為彼女の武勇伝を知る者もまた少ない。
だが、知っている者はその名を聞けば恐らく震え上がることだろう。
何故なら、過去に起こったあの忌まわしき攘夷戦争に置いて敵味方から恐れられる悪鬼羅刹の如き戦いをした者なのだから。
だが、彼女の本当の素顔を知る者はこの世に恐らく数人程度しかいない。
彼女が、戦を嫌い敵味方問わず慈悲を向ける心の優しい女性だと言う事を。
「御免ね、本当は銀時にこんな辛い運命を背負わせたくなかったの」
「運命? それってこの白夜の事か?」
その問いに紅夜叉は無言でうなずいた。
妖刀 白夜―――
かつて、数多の戦乱の時代にその名を残し、それを手にした者は天下を取れるとさえ言わしめた吉兆の刀。
だが、その実態は使い手を自身の操り人形と化し、己の欲望のままに血肉を吸い、やがては使い手すら食い尽くす魔性の刀。
それを手にした者は一騎当千の強さを得るが、その代償として一生戦いの運命を背負わされる事となる。
使い手の行くところ必ず戦乱が起こり、その度に多くの血が流れる。そして、その血を吸い肉を食らう事で妖刀は更に力を増して行く。
最終的に、その使い手すらも食い尽くす勢いで―――
「別に気にしちゃいねぇよ。寧ろ、こいつが無かったら俺は今頃桜月に殺されてたかもしれねぇ。それに、こうなったのも元は俺の責任だ。今更虫が良いかもしれねぇが、罪滅ぼしみたいなもんだよ」
「でも、それを使い続けていたら、今度は銀時がそれに殺される事になるんだよ。それが、私にはとても辛くて―――」
「そんなの、あの時のお前の苦しみに比べたら屁でもねぇだろ。お前は、これともう一つ。あの桜月を使って戦い続けていたんだからな」
白夜と桜月―――
これらは二本で一つ。一対の刀として、必ず同じ戦場で相まみえていた。
その悉くが敵同士で扱われており、決して相容れぬ存在とされていた。
攘夷戦争で、紅夜叉が用いるまでは―――
「それより、他の連中はどうしたんだ? それに、此処は一体?」
「此処には、私と銀時しかいない。でも、他の皆は無事だよ」
「え? そうなの!?」
「うん、爆風に飛ばされた先に小太郎の用意していた船があって、其処に落ちたの。だから皆無事だよ。もちろん、銀時もね」
「ヅラのか。相変わらず用意周到なこって」
銀時が桂の事をヅラ呼ばわりした矢先、目の前で紅夜叉がくすくすと笑い出した。
「まだヅラって呼んでるんだ。いい加減小太郎怒るんじゃないの?」
「別に気にしちゃいねぇよ。あいつが怒ろうが知ったこっちゃねぇ。寧ろこっちが毎回迷惑掛けられてんだ。あいつと付き合うと碌な事になりゃしねぇ」
「でも、小太
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