暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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Sentention;宣告
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向相馬。一つ君に言っておくべきことがあるんだけどね?」

『何だ』

「僕の患者をオモチャにするのはやめてもらいたいんだ」

『ふ』

笑みが返ってきた。

失笑でも嗤笑でも譏笑でも嘲笑でもなく、ただ電話口の声は苦笑した。

沈黙する中年の医者に、世界を席巻する天災は語る。

『聞かなかったらどうする。医療事故としてアイツを処分するかい?』

「分かっているさ。そんなことをしても君は止まらない。あの子は重要な位置にはいるけど絶対ではない。迂回策や予備……僕が考えつかないような反則手をもってして、君は絶対に目的を完遂させる。今回彼をを使うのは、もっとも安定したものだからかい?」

『まさか』

声の主はそう言って笑ったらしい。

その後、噛み砕くように穏やかに、声は言った。

『本当だったらもうとっくに終わってるのさ。確かに確実かもしれないけれど、この計画は最も冗長で最も回りくどく、それゆえに危険度(リスク)も高い。……()()()()()()()()()()()()()

覚悟もなく芯もない、そんな擦り切れたような声に医者は眉を顰め、さらに言葉を積もうとしたが、電話口の声は途端にもとの人を食ったような調子に戻った。

『これ以上はいくら先生でもダぁメだ。暗がりに入る覚悟もなしに覗くだけってのは帳尻が合わねぇ』

その言葉に、一瞬医者は黙った。

診察室の中で、不自然なほどに影を落とすカエル顔の医者は表情を消して口を開く。

「誤解がないよう先に言っておくよ?医者という職業を舐めない方がいい。多分僕は君以上の地獄と血と涙を見てきていると思うよ。君と僕との違いはただ一つ。そこに留まるか、帰ってくるか、だ。穴の底にいるだけで被害者面はどうかと思うよ?」

常ならない攻撃的な口調。

それに向かって即座に、吐き捨てるように声は言った。



『……なら、なんでアイツは死んだんだ』



血を吐くような、声だった。

主語のぼかしたその内容に、しかし中年の医者は咄嗟に返すことができなかった。

そして、それが最後だった。

通話が切れ、単調な電子音しか鳴らなくなった受話器を片手に、医者は秒針が一回転するほどの間固まっていた。

最後の――――末期の繋がりが、切れた。

それを、その事実をゆっくりと脳裏で解凍させながら、彼は小さく息を吐いた。

その意味さえ分からなかった。

その男の背中は小さかった。貫禄も何もない、ちっぽけな背中の男はただ佇んでいた。

いつまでも。










未熟な愛は言う、「愛してるよ、君が必要だから」と。


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