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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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。少し違うが、有名どころじゃ、我思う故に我在り、か』

自慢したがりなのだろうか。隠しているようだが饒舌になった口調でその奥底が透けて見える電話口の声に、医者はとくに言及するでもなく平坦な声で続けた。

「なら君に訊きたい。その《認識中枢(アートマン)》が歪んだ時、ハードである身体にはどんな影響が出る?」

ただのアプリケーションレベルならば、アンインストールという名の《切り捨て》を行えばそれで済む。だが、それがソフトの根幹そのものであるOSならば、その影響はどれほどのものになるというのだろうか。

カエル顔の医者の問いに、受話器の向こう側は一瞬だけ沈黙した。

しばしの一拍の後、世界を席巻する一人の天才は静かに口火を切る。

『…………正直に言うと、分からない。確かに俺はフラクトライトを発見した。けどな先生、その全貌となると全然まだまだなんだよ。生体脳のどの部位がどんな働きをして意識っつー結果を弾き出しているのか詳しく分かっていないのと同じこと。だから外側の上っ面だけ見て仮説や推論は立てられても、実際のことは分かんねぇんだよ』

猫箱の中みたいにな、と。

笑う訳でも、嗤う訳でもなく、受話器の声もまた平坦な声で重ねた。

その上で、

『だが、無関係という線はない』

「…………」

『なぁ先生、腹の探り合いはよそうぜ。そこまで言うからにはあるんだろ?《認識中枢(アートマン)》が現実の肉体に及ぼした影響、その証拠をさ』

軽薄なその声に数秒逡巡した医者は、しかし短く息を吐いて、棚から大きな茶封筒を取り出す。何の変哲もない普通の封筒だが、その表紙には大判のハンコで黒々と部外秘と押されていた。

カエル顔で中年の医者はその口を躊躇いなく開け、中身を天板の上に滑らせる。

それは先刻見ていたのと同じような、数枚のレントゲン写真だった。

普通の少年()()()モノの部位を撮った、白と黒で彩られた画像。

「翼と尻尾……だってさ」

『あ?』

「小日向蓮君だよ。彼が、勝てない敵に勝とうとした自分、そのイメージだ。子供なんだから、正義のヒーローなんかだと思うだろう?けど違った。彼はそんな都合のいい者がいないと知っていた。だから、そんな想像さえつかないあやふやな存在より、もっとイメージしやすく、そして絶対的に強い存在に縋ったんだね?」

分からないかい?と医者は一拍を置く。

「モンスターだよ。SAOを通して気が遠くなるほどの数対峙してきた敵の姿を、彼はそのまま自分の心にトレースしたのさ」

『それが翼と尾のイメージ……?。――――まさか』

何かを悟り始めた電話口の声に頓着することもなく、医者はX線写真を透かし見る。

「結果的に、魂のカタチは歪なまま
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