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Raison d'etre
二章 ペンフィールドのホムンクルス
11話 望月麗(3)
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 もしかしたら麗だけでなく、自分も少し汗をかいているかもしれない、と思った。
「よろしければ、ですけど」
 彼女が、躊躇するように言う。
 ゆっくりと。
 優の瞳を真っ直ぐ見つめて。
 繋いだ手を強く握って。
「ここで、休憩しませんか?」
 何でもない風に、彼女は言った。
 彼女の後ろの建物に、目を移す。
 ホテルだった。カップル向けの。
 優はそこでようやく、自分たちがホテル街に立っている事に気づいた。
「ここ、って――」
 掠れた声が出た。
 二歳年下の、まだ十四歳の麗から提案された事がすぐには飲み込めなかった。
「休憩、できるみたいですよ。泊まり以外でも使えるらしいんです」
 夕日に照らされて、麗がはにかみながら言う。
 その頬は夕日以外の効果で朱く染まっていた。
 彼女がこの建物の意味を理解した上で休憩を提案しているのは明らかだった。
「……あんまり説教みたいなことは言いたくないけど」
 麗の視線を真っ直ぐと受け止めながら、慎重に言葉を選ぶ。
「僕たち知り合って間もないよね。ダメだよ。そういうのは、ちゃんと段階を踏んでからじゃないと」
 年上として諭すべきだと思った。しかし、結果的に失敗した。
 優の言葉が終わる前に、麗が叫んだ。
「よく考えた上での判断です! 遊びとかそんなんじゃありません! 私、本気です!」
 夕陽が逆光になっていて、麗の表情はよく見えない。
 しかし声は決意に満ちたもので、それだけで彼女が真剣なのだとわかった。
「先輩って好きな人いないんですよね」
「……うん、いないよ」
「じゃあ――」
 麗が一歩踏み出す。
「――私を好きになってください」
 更に麗が一歩踏み出した。
 麗との距離がゼロになり、甘い香りが優を包み込む。
 唇に柔らかな感触が触れた。
 目の前には、夕陽で燃えるように赤く染まった麗の瞳。
 至近距離で、彼女と視線が交差した。
 彼女の唇がそっと離れる。
「私じゃ、ダメですか?」
 一歩下がりながら、麗が不安そうに言う。
 ――何故、こんな顔ができるんだろう。
 数日前に麗から告白された時もそう思った。断った時、彼女は本当に悔しそうな顔をしていた。
 会って間もない人に対して、果たしてここまで一生懸命になれるものだろうか。少なくとも自分には無理だ、と思う。
「先輩」
 麗の透き通った声が響いた。
 茶色がかった大きな瞳が優を射抜く。
 その瞳に吸い込まれるような錯覚に優は陥った。
「答えを、聞かせてください」
 喉がカラカラだった。
 心臓が早鐘のように打っている。
 唾を飲み込む音が妙に大きく聞こえた。
 反対に
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