暁 〜小説投稿サイト〜
Raison d'etre
二章 ペンフィールドのホムンクルス
10話 望月麗(2)
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
はいるんですか?」
「それもいないかな。外出申請も全然出してないしね」
「それじゃ、私が一番乗りですね。勇気を出して良かったです」
 麗はそう言って笑う。
 年下とは思えないほどぐいぐいと距離を縮めてくる麗に、優は首を傾げた。
「そういえばいきなり告白されたけど、そんな好意を向けられるような出来事あったっけ?」
「単純に先輩がかっこよかったからですよ」
 シンプルな答えだった。
 店員がお皿を運んでくる。
 何となく話が途切れてしまって、優はそれ以上の追求をやめた。
「わ、イチゴの数凄いです。これはもはやイチゴ丼です」
 テーブルに届いたパンケーキを見て、麗がはしゃぐ。
「美味しそ――」
 口を開いた時、優は違和感を感じて動きを止めた。
「先輩?」
 麗が不思議そうな顔をする。
 優は弾かれたように窓ガラスから表通りを見渡した。
 ──どこか遠くのほうで巨大なESPエネルギーが膨らんでいる。
 しかし、その気配は5秒ほどで消えてしまった。
 亡霊対策室から支給されている端末を取り出す。出撃要請は来ていない。
「先輩、どうしたんですか?」
「え? あ、ごめん。通りすがった人が知り合いに似てたから、びっくりして」
「後ろ姿とかだと、私もよく見間違います。あれ、勘違いしたまま声かけちゃうと恥ずかしいんですよね」
 咄嗟についた嘘に、麗が経験談を話しながら楽しそうに笑う。
 優は笑みを浮かべて頷きながら、気のせいだと自分に言い聞かせた。
 ──あんなに巨大なESPエネルギーが実在すれば、特殊戦術中隊など簡単に壊滅してしまうのだから。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ