第五十二話
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「君ノ片腕ヲ頂戴?ソウシタラ見逃シタゲル。」
こいつは、どこまでも悪魔だった。
オレは歯軋りをして、レ級を睨む。
この…………ド畜生が…………。
ザシュッ!
千尋は、右手に握っていた軍刀で、左肘より上辺りを切り落とした。
その場に居た全員が、目を見開いていた。オレは、やっぱりというような顔をした。
この場面で、こいつが躊躇するわけねぇ。
「ほらよ。さっさと持ってけ。」
千尋は、切り落とした腕を拾い上げると、レ級に差し出した。
足元の海水は、赤く染まっていた。
―三十分前―
「さてと、全員今すぐ遺書書いといてくれ。」
長門さんはとんでもないことを言うと、どこからか取り出した人数分の紙とペンを全員に投げて寄越した。
全員、さっきより表情が暗く、重くなっていた。
どうやら、今までは戦艦レ級はeliteクラスまでしか発見されてなかったらしいが、今回の相手はその二つ上、戦艦レ級改flagship。ランク的には最高ランク。
皆、ペンを走らしていた。手が震えて、上手く書けてない奴が多かった。
木曾は、サックリと書き終わっていた。
長門さんは、スラスラと書いていた。
時雨は、遠くを見ていた。
冬華は、涙目になっていた。
金剛さんは、頭を抱えいた。
赤城さんは、何度もペンを落としていた。
加賀さんは、相変わらず無表情だった。
羽黒さんは、しゃがみこんでいた。
那智さんは、羽黒さんを慰めようとしていた。
北上は、上を向いて目を閉じていた。
神通さんは、首を横に振るだけだった。
俺は…………。
「だからどうした。」
紙とペンを長門さんに投げ返した。
全員、こっちを見ていた。
皆驚いてるが、木曾と冬華だけは、納得したような顔をした。
「誰が死ぬ準備なんかするかよ。帰れるに決まってらぁ。
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