第三章
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「お酒もこうして」
「あえて冷やさずに」
「普通の温度で」
ありのままでというのだ。
「飲むことが好きです」
「夏でも冬でもか」
「はい、では今日は」
「すき焼きにお酒でな」
「お祝いをしましょう、お母さんも」
すき焼きを作ってくれてお酒も出している母にも酒を勧めた。
「飲んで下さい」
「それじゃあね、そして明日もよね」
「はい、大阪の街と市民の方々に何かあれば」
「その時はね」
「僕はすぐに動きます」
藤男はこのことは鋭い目で答えた。
「大阪二十六戦士の一人として」
「そうよね」
「その為の居合、そして銘刀千本藤を以て」
「戦ってくれるのね」
「その時はお任せ下さい」
藤男は母に確かな声で答えた。
「僕はやります」
「いつもそうしていて」
「これからもです」
「大阪の街と私達を守ってくれるわね」
「そうします」
「お願いするわね、じゃあすき焼きとね」
母は息子から酒を受けそれを飲みつつ話した。
「お酒を楽しんでね」
「英気を養いですね」
「皆の為に頑張ってね」
「そうさせて頂きます」
藤男は強い声で約束した、そして実際にだった。
淀川で溺れている子供がいた、藤男はその情報を聞いてすぐに現場に向かい一切躊躇せず川に飛び込み。
子供を救い出した、そのうえで言った。
「すき焼きとお酒がある限り僕は無敵でいられるんだ」
英気を養うこの二つがあってこそというのだ、藤男は助け出した子供をタオルで優しく拭いてあげてから言った、その整った顔には実に明るい笑顔があった。
だがそのすき焼きも酒もだ、どちらも関東のものと聞くとだった。
「好きは好きですが」
「どうにもだよな」
「君としては」
「はい、最高ではないですね」
こう周りに話した。
「僕は大阪で生まれ育っているので」
「大阪二十六戦士だし」
「そのこともあってね」
「すき焼きとお酒はね」
「関西、ひいては大阪のものだね」
「そうです、他のお料理もそうですが」
うどんなりおでんなり鰻なりにしてもだ、藤男にとって大阪の味付けは最高であり関東風はどうもなのだ。
そしてだ、特にだったのだ。
「すき焼きは、そしてお酒も」
「こっちのお酒でないとね」
「最高じゃないんだね」
「そうです、どちらも関西風でないと」
どうしてもというのだ。
「僕は納得出来ないものがあります」
「大阪じゃないとね」
「どうしてもだね」
「そこは絶対だね」
「はい、そうです」
このことは、だった。彼にしては大好きなすき焼きや酒は最高のものは関西ひいては大阪のものだった。この二つが彼を最も力付けるものだった。
夏でもすき焼き 完
2018・2・
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