巻ノ百二十五 真田丸その九
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「茶々様を大事にされるあまりな」
「その我儘はいつもです」
「聞かれていた」
「ですから」
「母上は止められぬばかりか」
むしろというのだ。
「励まされるわ」
「ですから」
「母上にお話しても」
治胤も言う。
「無駄ですな」
「うむ、このことに関してはな」
茶々についてはとだ、大野は歯噛みして言った。
「わしがお止めせねばならんが」
「兄上、こうなれば」
治房の今の言葉は必死なものだった、兄に強く言っていることにそれが何よりも出ていた。
「兄上がです」
「そうは言ってもじゃな」
「お止めせねば」
茶々、彼女をというのだ。
「そうしなければです」
「大坂は滅びるな」
「はい」
まさにというのだ。
「兄上がそう言われてもです」
「豊臣家の執権としてな」
「左様です」
「わかったとしか言えぬな」
この場合はとだ、大野は弟に苦い顔のまま答えた。
「今は」
「そうなるかと」
「そしてじゃな」
「大坂の勝ちを手に入れましょうぞ」
茶々の余計な口出しを止めてというのだ。
「これまではどうにもなりませんでしたが」
「今はどうにもならぬことをか」
「どうにかせねば」
それこそというのだ。
「なりませぬ、ですから」
「やってみるか」
「それでこそ大坂の執権ですから」
茶々と大坂の為に止めてこそというのだ。
「お願いします」
「ではな」
大野は弟に約束はした、しかしだった。
彼はどうにも自信がなかった、それでその大柄な身体の背を曲げて悩む時が多くなった。だがその中でもだ。
戦の用意は進み瞬く間にだった、幸村が築くことを許された大坂城の南東の出城も出来た。そこは木の壁と深い空堀で守られた砦で。
鉄砲を撃つ為の穴と櫓が見事な間で壁に設けられていてしかも壁は高かった。その砦を見て大野も思わず唸った。
「これはまた」
「如何でありましょうか」
「はい、この砦ならば」
自分を案内する幸村に答えた、二人共今は具足を着けて陣羽織まで羽織っている。幸村の頭には兜もある。
「かなりの敵が来ましても」
「防げますな」
「はい、しかも壁の裏には」
つまり城の方から見ればだ。
「壁のところを行き来しやすい様になっていますな」
「その為の足場を設けました」
それも道としてだ。
「櫓と櫓が互いに守り合える様にもです」
「されましたか」
「これならば数万の敵が一度に来ましても」
幸村は笑って大野に話した。
「ここに多少の兵を置くだけで」
「守れますか」
「この真田丸もあればです」
「堅固なこの大坂城はですな」
「攻め落とされることはありませぬ」
「だから守りは万全ですな」
「安心して攻められまする」
外の幕府方の兵と戦えるというのだ
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