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儚き想い、されど永遠の想い
377部分:第二十九話 限られた時その八
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第二十九話 限られた時その八

「何があっても」
「では今は」
「今は?」
「お茶を飲みましょう」
 こうだ。真理に微笑んで述べた義正だった。
「そうしましょう」
「お茶ですか」
「日本のお茶でどうでしょうか」
 具体的な茶はそれだった。
「それとも別のお茶にされますか」
「そうですね。梅は元々は支那の花でしたね」
「はい」
 その通りだとだ。義正は真理に素直に答えた。
「元々はそうです」
「ではです」
 こう一言置いてからだ。真理は答えた。
「ここは我が国のお茶ではなくです」
「支那のお茶をですか」
「それを飲みたいのですが」
 義正にだ。静かに述べた。
「それはどうでしょうか」
「いいですね」
 義正は少し考える顔になったがすぐに穏やかな顔になって彼女に答えた。
「実はです。ここはです」
「日本のお茶をと思われていたのですね」
「抹茶はどうかと思っていました」
 具体的にだ。その茶だったというのだ。
「ですが。言われてみればです」
「支那のお茶の方がいいですね」
「梅が元々あの国の花ですから」
 支那から日本に伝わったのだ。菅原道真がこよなく愛した花は最初から日本にあったのではなくだ。海を越えて日本人に会いに来たのである。
 そのことを頭の中に入れてだ。義正は言うのだった。
「ではそれがいいと思います」
「そう言って頂けるのなら」
「支那のお茶にしましょう」
 義正はこう述べた。
「持って来ますね」
「私もお手伝いさせてもらいます」
 二人でだ。そのお茶を用意してであった。
 梅の前に敷き物をしてそこに座って飲む。その支那の茶を。
 茶を飲みつつ梅を見てだ。真理が言った。
「最高の贅沢ですね」
「贅沢ですね」
「はい、贅沢です」
 こう言うのだった。
「これもまた」
「贅沢とはです」 
 義正もここで話す。
「心に余裕がある生活のことを言うとです」
「豪奢な生活は違うのですね」
「はい、そう聞いています」
 また別だとだ。義正は真理に話す。
「その様に」
「余裕ですか」
「ですから今はです」
 そのだ。今もだというのだ。
「私達は贅沢の中にいます」
「豪奢ではなくですね」
「豪奢と贅沢は違います」
 義正はまた真理に話す。
「豪奢は派手な生活を送ることです」
「派手な」
「しかし贅沢は余裕なのです」
「余裕。一口に言ってもですね」
「はい、余裕のある生活が最も難しいです」
 義正はこう考えていた。実際に日本人はあまり余裕のある生活を送りきれないところがある。とにかく時間があれば働き学ぶ、ゆとりを取ることが今一つ苦手なのだ。
 義正もこのことについてだ。こう言うのだった。
「私にしてもです」
「義正さんもですか」

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