東方
ライヒスタークに赤旗を@〜伊吹萃香の憂鬱
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「はあ」
思わずため息をついてしまう。伊吹萃香は憂鬱だった。と、気づいたところで、慌てて周囲を見渡す。周囲には部下が慌ただしく動いているが、どうやらため息はバレなかった様だ。
上官たるもの、戦争中に動揺していては部下に示しがつかない。しかも、彼女は――――赤軍のトップなのだから。
1941年の冬は悪夢のような日々だった。ドイツ率いる人類統合体軍に前線に次々と食い破られモスクワ100キロ近郊まで侵入を許してしまう。
辛くも撃退に成功したが、そんな萃香を周囲は名将だという。
だがそんなわけがない。見す見す敵の大侵攻を許し、多くの損害がでた。ソ連国防人民委員令第227号なんて馬鹿げた命令を律義に守って "全滅" した部隊も数多ある。
そんな彼らが文字通り体を張って稼いだ時間があったからこそ人類統合体の撃退に成功したのだ。
だから勝たなくてはならない。その一心で足掻いてきた。バグラチオン作戦を発動し、クルスクの戦いを経て流れは完全にこちらに傾いた。
オーデル・ナイセの激戦を超え、いま萃香が率いる親衛師団はベルリン間近まで迫っていた。目指すは――――ベルリン一番乗り。
(昔はよかった。あたしはただ戦えればそれだけでよかった)
そもそも日本を離れわざわざソ連にやってきたのは戦いを求めてのことだ。たまたまものすごく強い妖怪が大陸にいるときいた萃香が、まるで導かれるかのようにレミリアの下にやってきて戦い――完膚なきまでに負けた。
ここまでの大敗は鬼の四天王伊吹萃香にして初めての経験だった。思えばそのとき恋に落ちてしまったのかもしれない。その圧倒的強さとカリスマに。なお、そのカリスマはたまにブレイクする模様。
(レミリアとの闘いの日々は本当に楽しかったな)
夢のような日々だった。毎日強い妖怪と戦える日々。ソ連黎明期は敵に苦労しなかったし、フランドールや紅美鈴といった切磋琢磨できる相手もいた。
前線で暴れるだけだった萃香はやがて、戦功をあげていき、ついには赤軍のトップに立ったのである。
むろん望んでのことではない。けれども、意外と面倒見のよかった萃香は赤軍の将兵に慕われていた。
そんな彼らから、赤軍の、ソ連の未来を託されてしまえば萃香に否やはなかった。
(死んでいった奴らに思いを託されたら、どうしようもないよ。まさに死人に口なし。いや、違うか)
此度の大祖国戦争でも最前線で暴れたかったが、地位と責任がそれを許してくれない。いっそすべてを投げ出せればと思うが、いまも最前線で死にゆく将兵にそのような不義理はできやしない。鬼とは約束を守る律義な種族なのだ。なお、花妖怪は地位と責任を放
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