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天国と地獄<中世ヨーロッパパロディー>
3 小さくつぶやいたことほど、聞こえているものだ。
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の。ごめんなさいね、」

 と言って、逃げようとしたが、上手くいかなかった。

 手首をつかまれて壁に押し付けられる。
 いわゆる壁ドンである。

_「お前、学年末のダンス、オレと組まねェか?
  ついでに、そのまま結婚しちまおうぜェ、」

 と、耳元で囁く。
 せっかくならこれを別の、晋助(かれ)を本命な子にすれば効率的なのに、と心の中で毒づく。

 そう、高杉の実家は悪魔族きっての名門であり、純潔のヴァンパイアの家系である。
 ほかのキレイな名門悪魔族のお姉さま方を差し置いて、なぜ私にばかりアプローチするのか。

 私には理解しがたい。

_「ありがとう、晋助。ちなみにそれをお断りしたらどうなるのかしら?」

 と、そろりそろりと後ろに下がりながら冷や汗をかいている。

_「お前に拒否権はねェ。オレは何としてでもお前を嫁にもらうつもりだ。」

_「そう、でもお父様がお許しになるかしら?
  こんな素性も分からない娘と結婚だ、なんて。」


 そう、私は物心着いた時から「お登勢」という(ひと)に連れられて育てられたが、戦争で彼女とはぐれてさまよっていたところを、今は亡き、松陽先生に拾われた。
 この学校に入学するまで、松陽(かれ)の開いていた塾で勉強していた。まぁ、孤児院と塾が一体化した施設だったが。もちろん孤児だけではなく、一般の子も一緒に学んでいた。
 その時に出会ったのが、銀時、(ヅラ)、晋助だった。

 私にはそれまで、家族と呼べる家族がいなかったが、彼らと出会ってから私の人生は変わった。
 人を信じるようになったし、何より「友達」という存在がどれほど大切なものか、を知ることができた。


_「んなこたァ、どうでもいい。どうせ次期当主はオレだから、心配はいらねェ。」

_「そう、それなら未来は安泰してるじゃない。誰か素敵なお嫁さん(私以外)をもらって幸せになって。私は…自分の未来は自分で切り開くわ。」



 と、晋助を何とかかわして、その場を去った。



 私もずっと引っかかっていた。なぜ晋助が私にここまで執着するのか。
 お登勢や松陽が言っていたこと、そして組み分け帽子が言っていたこと。

 _「お前には、2つの寮がふさわしい。グリフィンドールか、スリザリン。
   グリフィンドールには、勇気を兼ね備えたもの。そしてスリザリンには偉大になる素質を持っているもの。このタイプは珍しい。君には2つの血が流れているようだ。だが、寮を選ぶのは君次第。   
   すべては君の頭の中である。」

_「妹君はあんな生活をしているのに…なぜ姫様にはこんな仕打ちをなさるのでしょう?」

 「姫様」?


_「あなたは、来るべくしてここに来た。
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