暁 〜小説投稿サイト〜
ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
人狩りの夜 5
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
用可能なのだ。
 レニリアを中心に竜巻が発生し、周囲にかまいたちが発生。黒魔【シュレッド・テンペスト】にも等しい風の刃が吹きすさぶ。発動前でさえ、このような現象を引き起こすのだ。【エア・ブレード】自体の威力たるや、どれほどのものだろうか。
 両手が舞うように動いて幾度も宙に印を刻み、十字を切る。

 轟ッ!

 上下左右から不可視の刃が迸り、タラスクスの甲羅を削って壁に大穴を空けた。

「おお、すごい! まるでバギクロスだ! ……だが、惜しいなぁ。あたっていれば決まっていたのに」

真銀(ミスリル)日緋色金(ヒヒイロカネ)以外の武器では傷つけることができないといわれる宝石獣の堅固な甲羅を削り取り、背後の石壁にはくっきりと十文字の形で大穴が穿たれていた。
 その断面はなめらかで、まるで鋭利な刃物でホールチーズを切り分けたかのようだ。

「ふぅ……、使いなれない魔術を使うとこれだから――。レイヴン、悪いけどもう少しそいつをひきつけてくれない。次は絶対にはずさないわ」
「やめておけ、あんな大技を続けて放てばマナ欠乏症になるぞ」
「ならどうするのよ、なにか考えがあるわけ?」
「ああ、ある。こいつ、さっきから直接攻撃のほかは炎熱と電撃しか使ってこないよな」
「ええ、そうね」
「ドーム型の背甲と平たい腹甲に円形の鼻孔。この合成魔獣のベースとなった生物はサイネリアノロガメじゃないかな」
「わたし、動物のことはあまりくわしくないから」
「サイネリア島を中心とした温暖な島々にしか生息できない、寒さに極端に弱い生き物だ。宝石獣に改造されても寒さに弱いという特徴があるのかもしれない」
「弱点が冷気だとしても、魔術が効かないなら、どうしようもないわ」
「あいつの体を直に冷やす必要はないだろう。この部屋を氷室にしてやるから、【エア・コンディショニング】で暖をとれ」

 秋芳の意図を察したレニリアはすぐに【エア・コンディショニング】――術者周りの気温と湿度を調整する特殊呪文(エクストラ・スペル)を唱える。

「《銀嶺より吹きし冷風よ・氷原を駆け・凍土に満ちよ》」

 瞬時に血液が凍るほどの強烈な凍気と、それによって生じた氷弾の合わせ技によって標的を粉砕する【アイス・ブリザード】でも、空気も凍る極低温の輝く凍気を広域に展開する【フリージング・ヘル】でもない。
 【クーリング・マテリアル】。対象物の温度を下げる地味な冷却呪文。魔力を消費し、維持し続ける必要があるが、理論上は絶対零度まで下げることが可能だ。

 UOOOッ!

 妨害しようとタラスクスが炎雷を放とうとするが、不発に終る。レニリアの【エア・ブレード】による損傷で、マナの放出ができなくなったのだ。
 穿たれた甲羅についた宝石はただただ明滅を繰り返すのみ。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ