人狩りの夜 5
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」
「【エア・ブレード】を使うわ」
「極めれば岩盤をも切断し、人の体ならば一滴の血を流すことなく両断する真空の刃を生み出すという攻性呪文か」
「ええ、でもわたしの実力じゃあそこまではいかないかも。それでも試してみる価値はあるわ。ただ、【エア・ブレード】は節数が多いし、集中に時間がかかるから時間稼ぎをお願いするわ。あいつの注意をそらしてちょうだい、あなたならあいつの攻撃を寸前で散らせるでしょ」
「やってみよう」
言うが早いかタラスクスの前へ飛び出し、鼻先に布棍を叩きつけた。
足の踏み込み、腰の回転、肩、腕、手首のひねり――体内で練った勁力が槍と化した布を螺旋状に伝わり、浸透系の打撃となる。
鋼の硬度を誇るタラスクスの外皮だが、内部に伝わる衝撃までは無効化できない。
KISYAAAaaaッッッ!
たいていの動物にとって鼻は神経の集中する急所である。魔改造をほどこされた合成魔獣であるタラスクスも鼻を攻撃されるのはいやのようで、いきり立って秋芳に狙いをさだめた。
牙を剥き出し、六本の足を振り回して暴れまわる。
秋芳は杭のような牙と丸太のような足による猛攻をかいくぐり、布棍を一瞬のうちに二閃三閃させる。
魔鉱石におおわれた外皮には傷ひとつつかないが、打撃に込められた勁力がタラスクスの筋肉と神経を痛めつける。
内傷というやつだ。
この闘方は、ここルヴァフォース世界では魔闘術と呼ばれる技法に酷似していた。拳や脚に魔術を乗せ、インパクトの瞬間に相手の体内で直接その魔力を爆発させるという、魔術と格闘術を組み合わせた異色の近接戦闘術に。
(牛鬼よりもでかいな、こんなデカブツとやり合ったのは鈴鹿山の大鬼以来か)
秋芳とて元の世界では数多の動的霊災を修祓してきた猛者である。
小山の如き体躯をした合成魔獣が相手でも、一歩も引かず応戦する。
「――《天翔る風竜よ我らにその力を示せ・天を仰ぎし者どもよ地にひれ伏し祈れ・空よ裂けよ・ 颶風よ猛れ・大地を覆いし黒雲を切り裂け》――」
一節詠唱と三節詠唱――。
基本的に呪文の詠唱は三節でおこなわれるが、略式詠唱のセンスがあれば一節による詠唱も可能である。
特徴として一節詠唱は素早く魔術を発動させることができるが、暴発する危険性がある。
一方、三節詠唱は発動速度が遅いが魔力の消費効率が一節より良い。
俗なたとえをすれば、一節詠唱はMPを多く消費する。というやつだ。
そして非殺傷系の攻性呪文でも時間をかけて魔力を練り上げ、三節以上の詠唱節数をかけて呪文を唱えて威力を最大限に高めれば、 じゅうぶんな殺傷力を得ることができる。
この応用で、本来ならばあつかえない高レベルの呪文であっても詠唱と集中に時間をかければ使
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