人狩りの夜 5
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有効な魔力障壁を展開する。非常に強力だが座標指定呪文なので、使用すると足が止まってしまうのが欠点。
呪文は即座に効果を現し、光の六角形模様が無数に並ぶ魔力障壁がレニリアの目前に展開。
ひと呼吸ほど遅れて目も眩む閃光と耳をつんざく轟音が炸裂した。幾条もの稲妻が乱舞し、雷音とともに視界を埋め尽くす。
タラスクスの全身から放たれた雷霆の嵐は【プラズマ・フィールド】にも匹敵するだろう。
「《霧散せよ》」
一方の秋芳は【トライ・バニッシュ】によって放電攻撃を無効化。雷霆は秋芳の周りで煌めく塵のような魔力の残滓となって空間に散華した。
黒魔【トライ・バニッシュ】。空間に内在する炎熱、冷気、電撃の三属エネルギーをゼロ基底状態へ強制的に戻して打ち消す、対抗呪文の基礎。
一般的に防御呪文は【フォース・シールド】、【エア・スクリーン】、【トライ・レジスト】の三種が基本とされる。
それぞれに『万能で強固だが足が止まり移動ができない』、『万能で自由に動けるが物理的な衝撃に弱く消滅しやすい』、『自由に動けて魔力が続く限り永続的だが効果は三属性だけで損傷を軽減するだけ』と、おのおのに一長一短がある。
これら三魔術が受動防御ならば、【トライ・バニッシュ】は能動防御といえるだろう。
相手の攻撃を読み、先んじて動いて無効化する。その性質ゆえ決まれば決定的だが失敗すれば、もともこもない。
実戦で多用する機会は限られている。
それを、秋芳はもちいた。
なぜか?
見鬼によってタラスクスの攻撃を電撃属性だと見抜いたからだ。
UOOOnnッ!
タラスクスの甲羅がふたたび激しく明滅し、マナが放出。こんどは、雷ではなく炎。
燃え盛る火焔の渦が室内を焦がす。
「…………!」
「《霧散せよ》」
レニリアはそのまま障壁を維持し、秋芳は再度【トライ・バニッシュ】で炎を消し去る。
「雷に火ときて、次は氷かしら?」
「……いや、また雷だ」
迸る雷光。
灼熱の爆炎。
炸裂する火球。
荒れ狂う迅雷――。
雷火の乱舞。タラスクスは雷と炎をでたらめに放ちまくる。
そのつど秋芳は打ち消し、レニリアはさらに魔力を奮い、障壁を強化していく。
「レイヴン、ちょっとこっちに来て」
秋芳はレニリアの手招きに応じ、【フォース・シールド】の範囲内に素早く移動する。
「あなた、なんで次に来る攻撃の種類がわかるの?」
「魔力の動きを読むのが人よりも少し早い体質なんだ」
むろん、これは見鬼のことである。
「まぁ、便利なこと」
「それよりこのままではジリ貧だぞ。なにか手があるのか?」
「三属性以外の攻撃手段、風の魔術を試してみるわ」
「強力な風魔術の心得があるんだな
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