人狩りの夜 5
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空間が広がっていた。
暗くはない。光源はドーム状の天井にいくつも灯された魔力光だ。
「なんだ、てっきり水牢にでも落とされてケルピーやマーマンといった水棲魔獣をけしかけられるとでも思ったぞ」
「ほう、中々興味深いことを言う。その発案、次回から使わせてもらおう」
「おまえに次はないわ、クェイド。悪あがきしないでとっとと鼻歯ブラシの刑に――」
OOOoooUUUuuuNNNnnn――
咆哮が轟くと壁の一角が上がり、新たな魔獣が姿を現した。
六本の足に獅子の顔をした、家ほどもある巨大な亀。甲羅をふくめ、その巨体には大小無数の透きとおった宝石のようなものでおおわれ、ほのかに光り輝いていた。
「次がないのは貴様らのほうだ。我が最強の宝石獣タラスクスの餌になるといい」
「宝石獣……かつてわが国が密かにおこなっていた合成魔獣研究の最高傑作として、理論上の設計だけはなされていたと言うわ」
「なんで『理論上』止まりだったんだ?」
「生産するためのコストがあまりにも高かったため、軍縮傾向にあった当時の政局にかんがみて実際に創られることはなかったの」
「ふぅん、そんなにすごいのか」
「様々な魔鉱石で構成された外皮は炎熱・冷気・電撃といった三属の攻性呪文が効かず、真銀と日緋色金以外のいかなる武器でも傷つけることができない硬度を――しまった!」
「どうした?」
「わたしたち、たった今、高い所から落下したのにスーパーヒーロー着地しなかったわ!」
「膝に悪いからやめろ」
「だから【グラビティ・コントロール】がかかっているときにするんじゃない」
「あれは高速で落下して決めるからこそかっこいいのであって、今さっきみたいにゆっくり落ちたときは『ふわり』と着地したほうが凄味が出るだろ。なんかこう武術の達人的な」
「それは東方人的な感覚ね。もっとこう、派手にいきたいのよ、わたしは」
UOOOUonnnッ……
咆哮とともに丸太のような前足を振り上げ、突進するタラスクス。
破城槌のごとき一撃を跳んで躱すレニリア。
地を走り避ける秋芳。
「まぁ、目まで硬いのね」
「足のつけ根もだ」
レニリアはレイピアで、秋芳は布棍で。避けると同時にそれぞれ攻撃をしたのだが、はじかれた。
大抵の生物の急所である眼球と四肢のつけ根も鋼の硬度を持っている。
UloooUOOOnnッ!
大亀獅子が雄叫びを上げると、その巨体に埋め込まれている宝石が激しく明滅する。
膨大な量のマナが放出し、破壊のエネルギーと化す。
「《光の障壁よ》!」
攻撃に備えてレニリアは【フォース・シールド】を唱えた。
黒魔【フォース・シールド】。無次元・有次元を間わず、あらゆる攻撃に対し
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