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名探偵と料理人
第四十一話 後編 -そして人魚はいなくなった-
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弁蔵さんの家に着いたが、弁蔵さんは不在だった。通りかかった禄郎さんが流石幼馴染みというべきがカギの隠し場所を知っていた。それを使い、部屋の中に入って彼女の部屋を物色した。アルバムの中には楽しそうにしている幼馴染みたちの写真がいっぱいあった…なのに、なぜ。禄郎さんが言うには映画の金賞には沙織さんの特撮と君恵さんの特殊メイクで撮ったようなものであると教えてくれた。…ん?

(新ちゃん、何探してるの?)
「あれがない」
「あれ?」
「なあ、龍斗。お前が言ってたノックスの十戒って「一人二役」のことか?」
「!!じゃあ、分かったんだね」
「ああ…」



沙織さんの家を出た俺達は再び神社へと戻っていた。そこで小五郎さんたちと別れ、新ちゃんは物陰で平ちゃんに電話した。俺はその後ろで彼の推理を聞いていた…そっか、事の発端は三年前なのか。そして金賞を取るほどの特殊メイクの腕が培われた歴史。
平ちゃんのたどり着いた結論と新ちゃんのたどり着いたものは違っていたが、俺の出した「ノックスの十戒」を活用していたのは新ちゃんの方だった…電話口から激高した平ちゃんの声が聞こえてくるが、

「服部…不可能なものを除外していって残ったものが…たとえどんなに信じられなくても…それが真相なんだ!!」
『なんやとぉ!?…弁蔵さんが見つかったらしい!オレも警察の人と捕まえに行くさかい、捕まえ次第そっちに行く!まっとけや!!』

その言葉とともに、乱暴に通話は切れた。

「俺だって、信じたくねえよ…なあ、龍斗」
「……なんだい?」
「幼馴染みってさ。こんなに脆いものなのかな…?」

そう問いかけた新ちゃんの目は、とても寂しい色をしていた。


――


神社の拝殿に島の関係者を集めるように手配した。眠りの小五郎の推理を披露するというと島民も殺人事件を早く解決してほしかったのだろう、人が人を呼んでどんどん集まってきた。

「オウ!探偵さん。望み通り連れてきてやったぜ?山の中を駆け回っていたこの男をよ…」

そういって福井県警の刑事が連れてきたのは弁蔵さんだ。

「さあ聞かせてもらおうか?巷で噂の眠りの小五郎の推理ショーをよ!」

そうせかす刑事さんに対して、新ちゃんは変声機で声を小五郎さんの声に変えて答えた。

「その前に大阪の少年はどうしました?あなたと行動を共にしていたはずですが?」
「ん?彼なら山ではぐれた後見てないが…」

え?

「え?」

俺と紅葉は全体が見渡せ、島民の表情が見えるように向かい合う位置になる部屋の角に座っていた。その為、小五郎さんの後ろにいる新ちゃんの姿も見える(他の人は小五郎さんの体で新ちゃんは見えない)。思わず、彼の方を見たが彼も動揺している。どういうことだ?

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