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名探偵と料理人
第四十一話 後編 -そして人魚はいなくなった-
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確かに何か音がするね。これは……杖を突く音かな?ということは……皆が廊下の襖、新ちゃんと蘭ちゃんの後ろに視線をやった数瞬後、襖が開かれた。そこに佇んでいたのはあのお祭りでみた命様と同じ背丈の老婆だった。うーん。145歳か、俺が前世でこの位の時は30代の姿のままだったが普通はこんな風になる、か。
そんな風に呑気に観察していたのは俺だけだったらしく、他の皆は彼女の容姿に息をのんでいるようだった。紅葉に至っては俺の腕にしがみついているし。

(た、龍斗……)
(大丈夫、大丈夫。意思疎通が出来ない相手なわけではないし、俺も傍にいるから。ね?)
(うん…)

小声でそんなやり取りをしていると、命様が口を開いた。

「ワシに用とは汝らの事か?」
「あ、あのさー…」

お、一番近くにいる新ちゃんがびびりながらも話しかけた。蘭ちゃんは未だに固まっているのにこういう時は度胸があるよね。

「矢が貰えるあの当選番号ってどうやって決めるのかなあって…」
「………適当じゃよ?」
「へ?」
「前の当たり番号は競馬の当たり番号じゃったときもあったのうー!」
(おいおい…)

ふひゃふひゃと大きく口を開けて変な声で笑う弥琴さん……んー?
他の皆は彼女の解答と笑うその姿に毒気を抜かれたのか、気の抜けた表情になった。紅葉の手の力も抜けたしいい事、いい事なんだが……俺の目は彼女の口の中がものすごく気になった。
容姿は…言い方は悪いが年老いた、まさに老婆というのに相応しいのに彼女の口の中、歯並びはまだまだ年若い女性のようなものだった。まさか…

「ほんなら年に三本なんてケチらんとぎょーさん売らはったらええのに…」
「そりゃ無理じゃ。矢に結わえるワシの髪の毛にも限りがあるしの」
『大おばーちゃーん!お風呂の支度が出来たわよー!』

平ちゃんの質問に自身の髪の毛の一束を持ち上げてそう答えた弥琴さん……いや、彼女は…そんな風に思考を巡らせていると遠くの方から発信された君恵さんの声が家の中に響いた。

「すまぬが大した用がないならわしは風呂に入って床につく…」
「あ、ちょっとまだ話が…」
「それからそこの髪を結った娘よ…」
「え?アタシ?」
「「呪禁の矢」は元より魔よけの矢。手放せばその身に魔が巣をつくり、男は土に還って心なき餓鬼となりおなごは水に還って口利かぬ人魚となる…決して身から離すでないぞ……」

そう言って彼女は廊下の奥へと消えて行った。その様子をコタツから出て俺以外の男衆が見送っていた。

「声もしわがれて顔色も悪い今にも死にそーなバアさんやな…」
「とても不老長寿の体を持つ、不思議な老婆には見えね―な…」
「ほんとだね…」

その後しばらくして君恵さんがやってきて、弥琴さんは床について自分も休むことを伝
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