第四十一話 前編 -そして人魚はいなくなった-
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めに張られていたロープらしい。つまり、川に落ちた寿美さんがロープをつかみそのまま滝に落ちていく過程でロープが首に絡まり首つり状態になったのではないかとのことだった。
「でもなんで祭りをやってる最中にこないな暗い森の中にこなあかんねん?」
「人魚の墓でも探してたんじゃない?」
その言葉に答えたのは奈緒子さんだった。なんでも寿美さんはその墓を異様に気にしていたらしい。そもそもなんで人魚と言えるかと平ちゃんが聞くと、君恵さんは中年女性の骨だと警察から説明があったらしいが実際に火事を消した禄郎さんはその遺体の腰から下の骨が粉々に砕け、その散らばった骨も人の足の骨があるべき場所に存在していなかったそうだ。それからメディアが囃し立て、人魚の死体が出たことになった。そして…
「墓荒らし?」
「そう、火事の後1年たっても身元不明だったのでうちの神社に埋葬したのよ。でも観光客が不老不死を求めてその骨を盗もうとしてね。なんでも骨でも不老不死は達成できるからって。だから大おばーちゃんが信頼できる人に頼んで森のどこかに移動してもらってらしいわ」
「その頼んだ人って?」
「さあ。私も知らないんです」
「まあ事故、自殺、他殺のいずれにしても寿美さんの遺体を下に降ろして警察が来てからだな」
小五郎さんのその言葉に禄郎さんは寿美さんを抱えて鼻で笑い、こんな時間にこんな場所に来た寿美さんの不明に冷たい言葉を吐いた…奈緒子さんが言うには寿美さんは禄郎さんの許嫁だったらしいが。それにしたって幼馴染みが死んであの言葉はないだろうに……
下に降りたところ、人込みの中から矢を得た中年男性とは別の中年男性が彼女に駆け寄り号泣していた。話によると彼女の父親らしい。
「おとうーさーん!」
「オウ、蘭か。本土の警察には連絡したか?」
「それが、海が荒れて船が出せるまで当分来られないんだって!」
「おいおい…」
「ええやないか、犯人をこの島から逃がさないですむんやから!」
「犯人?まだこれが殺人事件とは決まったわけじゃあ…」
崖を降りる途中にするっと抜け出した新ちゃんと平ちゃんはどうやら誰でも他殺を可能とする証拠を見つけてきたらしい。
「龍斗」
「ああ、紅葉」
「はいこれ」
「ん?コーヒー?」
「神社に戻って買っておいたんです。滝の水を被ってたのがうっすら見えたから」
「ありがとう紅葉。…あっち」
俺は紅葉の心遣いに感謝しながら冷えた体にコーヒーを流し込んだ。
結局、こんなことが起きた後では沙織さんの家に訪問というわけにもいかなくなり命様に会いたいと言う新ちゃんの言葉に君恵さんが答えたことで俺達一行は島袋家にお邪魔する事となった。
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