暁 〜小説投稿サイト〜
名探偵と料理人
番外編1 〜昔語り1〜
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がない。名前って言うのは…まああれだ。お前がお前であることをはっきりさせるもんだ。…これで分かるか?説明が難しいな…」
「名前…ねえ。俺はどうして…」
「…さて、な。王都には子供を捨てる場所、みたいな場所があってな。そこでつい先日お前を拾った。周りにはお前の親でありそうな大人はいなかったからお前も俺達と同じだ。…運が良かったよ。あと一歩遅かったら…」

(ああ。今なら分かる。あの時リュージが言わなかったことが。彼に拾われていなかったら俺は…)

 当時の俺はなぜ彼が言いよどんだのかは分からなかった。それでも、俺が生きているのはリュージのお蔭であることは分かった。だから…

「…名前」
「ん?」
「名前、リュージがつけて」
「うぇ!?俺!?」
「うん。リュージがつけた名前がいい」
「んー。にしたって名前なんて付けたことないからなあ。んんー…んー…」

 数分間唸っていたリュージだったが、決まったのかがばっと顔を上げた。

「良し!お前は今日からリュートだ!どうだ?俺と似てかっこいい名前だろ!?」
「りゅーと…リュート。うん、格好いい。俺はリュート…」
「そうだ、リュート!お前は将来、このグループを率いる男になるのだ!だからグループのリーダーが心得ておかないといいけない事を特別教える!いいか、「死ぬのは年上から順に!」「年上は年下を何があっても守らなければならない!」「血はつながっていなくても俺達は家族。家族は裏切るな!」だ。他にもあるし、意味が分からんかもしれないけどこれは覚えておくんだ。俺達のリーダーはずっとこれを守ってきた。…だからリュート、お前は生きろよ?」

 そうして笑っておやすみ、と言ってリュージは床についた。



そこまで話して俺はもう冷めてしまった紅茶を一口含んだ。目の前の紅葉はのっけからの超展開に理解が追いついていないようだった。俺はその様子を尻目にその夜の事に思いをはせた。リュージと別れた後、俺もすぐに目をつむったが頭の中では俺を転生させてくれた白玉の事を思い浮かべていた。何故こんな過酷なスタートを切らせたのか。一般家庭…じゃなくても貧乏でも親の愛情のあるところでもよかったじゃないかと文句を言いたかった。お気楽転生生活を送れて、原作キャラと絡んで、楽しめるって…でも。さっきのリュージはこんな過酷な世界でも真っ直ぐに、しかも他人を慮れる優しさすら持っていた。あのときすでに30年生きてきたけど…漢として完全に負けたって思った。聞いてみれば15だという。栄養不足による発育不足で12くらいにしか見えなかったやせっぽっちの子供に、だ。だから俺も甘えた考えを捨てて「ココ」で生きていこう―そう思ったんだ。まあ、白玉関連は紅葉には話せないけどな。

「紅葉。続き、大丈夫かな?ここで止めとく?」
「え
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