暁 〜小説投稿サイト〜
名探偵と料理人
番外編1 〜昔語り1〜
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「ん?俺の前世の話を聞いてみたい?」
「うん。どんな子供時代やったんかふと気になってなー」
「うーん。どんな子供時代か。…まあいいけど。でも結構重たいよ?」
「お、重たい?なんや気になるやんか」

とある日の午後九時。各々がフリーの時間に紅葉が俺の部屋に来た。俺の前世の話が聞きたいそうだ。俺は紅茶を入れ、前世のトリコ世界での幼少期の話を始めた。





俺の意識がはっきりとして一番最初に見た物、それは何もない荒野だった。その時の俺は2、3歳くらいの姿で周りに親となる大人の姿はなかった。
何が何だかわからなくて唯々荒野を眺めていると、遠くの方からこちらに歩いてくる人影が見えた。徐々に見えてきた彼らは襤褸を纏った痩せ細った子供たちだった。俺が彼らを見ていることに気付いたのか、彼らは笑顔を見せながら俺に近づいてきて俺の頭を撫でてくれた。彼らの手には残飯のようなものや匂いからして明らかに腐乱していると分かる物が抱えられていた。
俺はその時まで荒野の方しか見ていなかったから気づいていなかったが、俺の後ろにはぼろぼろの木材を組み立てて建てた小屋のようなものが10数軒並んでいた。その1つに彼らは俺を伴って入って行った。中は天井の板が穴だらけの事もあって明るく、当時の俺より1つか2つ上に見える子供たちがいた。結局、子供たちは全部で20人ほど。上は12歳くらいで一番下は俺。全員の年齢を足しても200に満たないくらいの幼いグループだった。
全員が集まった後、俺達は年上グループが持ってきた残飯を囲んで食べていた。残飯といっても流石は美食世界というべきか、味はとてもよかった。ただ、20人でそれを分けるのは少なすぎた。…そして腐った食材。それも食べるかとも思っていたんだが実際は違った。他の子供たちはその腐ったものに沸いた虫を取出し頭を潰して食べていたのだ。俺は…その虫を食べる事が出来なかった。お腹がいっぱいだと嘘をついて寝床(という名の地面)を教えてもらい横になった。
しばらくすると、当時のグループのリーダーだったリュージが寝床に来て話しかけてきた。

「どこか痛いところでもあるのか?」
「え!?……ううん。…ねぇ!……」

 それから俺はリュージに色々なことを教えてもらった。俺は…というか、グループの人間は皆捨て子である事。荒野の奥にはジダル王国の王都と呼ばれる街があること。そこから捨てられた食料を拾ってくること。大人と取り合いになると殺されるから出来るだけ大人が選ばないものを選んでくること。この集落が王都が見えないくらいに離れているのは王都内だと大人に攫われてしまうからである事。なので食事は2日に1回である事。俺みたいな小さな子は主に集落周辺で普段は活動する事。他にもたくさん教えてくれた。そして…

「名前?」
「ああ。お前には名前
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