第三十五話 -学園祭前-
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血液を提供している蘭ちゃんと彼女の問診している看護師の姿がいた。
「龍斗君?」
「蘭ちゃんのだけで足りなかったら……ってことでね」
「そう……ねぇ大丈夫だよね?」
「大丈夫、絶対に助かる。もし向こうに連れ行かれそうになったら俺が引っぱり戻してあげるよ!」
「ふふ。そうなったときは期待してるね?…龍斗君、龍斗君は…ううん、なんでもない…」
少し表情が柔らかくなったけど顔色は悪い。それは血を抜いているせいだけではない、よな。それに今言いかけたのは…?
「えっと。すみません、そこに横になって左腕を出してもらえますか?」
「はい」
そうして俺の採血が始まった。流石に俺の血をそのままというには問題があるので、猿武による細胞の意思統一の応用で検査に引っかかりそうな細胞や成分は普通の人の血液にある成分に擬態して抜いてもらった。
血を抜いている間に感染症の既往歴、ワクチンや予防接種の有無、薬歴などを聞かれた。俺の問診中に蘭ちゃんと新ちゃんのクロスマッチテストの問題はなかったことが伝えられ、彼女の血液は手術室へと運ばれていった。彼女もすぐに出て行った。俺の血も新ちゃんと蘭ちゃんの血液と適合するといいが…
採決が終わり、採決室から出た俺は真っ先に手術室に…は向かわず自動販売機のあるコーナーに向かった。…しまった。着のみ着ままで飛び出してきたから財布も携帯も…お?
「ラッキー。ポケットに千円札か。…くっしゃくしゃだけども」
なんとか機械に通し、俺はスポーツドリンクを二つ買って手術室へ向かった。
手術室の前には博士と哀ちゃんが立ち、他の人たちは壁側の椅子に座っていた。
「はい、蘭ちゃん。これ飲んで。水分補給しないとね」
「あ、ありがとう。龍斗君」
「いえいえ」
スポーツドリンクを渡した後は、博士の近くに立ち話しかけた。
「博士。手術室に入ってどのくらい経ちましたか?」
「おお、龍斗君。そうじゃな、30分って所かの。それより君の方こそ大丈夫かの?」
「え?ええ、血を抜いたくらいじゃどうってこともないですよ?」
「いや、そのこともじゃがそうじゃないぞい(さっきぶつくさ言っていたのは無意識だったのかの?あそこまで動揺した龍斗君を見るのは初めてじゃったしな…)」
「……」
「な、なに?哀ちゃん」
「…いいえ。なんでもないわ」
「そ、そう?あ、博士(優作さんや有希子さんには?)」
「(いや、まだ連絡しちょらん。どうすべきかのう)」
「(…すべき、だと思いますよ。だって家族ですから。たとえ今どうしようもなくても、あとから聞くより今知らせておくべきかと。俺が電話してきますよ。紅葉にも連絡を入れないといけないので)」
「(わかった)」
「(それじゃあ…)あの、小五郎さん」
「ん?お、龍斗君。どうした?
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