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名探偵と料理人
第三十二話 -世紀末の魔術師(5/6)-
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とに対してかなりの自負を抱いている事です。まあそこから船で聞いた情報とを照らし合わせると「ラスプーチンが受けとるはずだったロマノフ王朝の財宝を子孫である私が受け取るのにふさわしい」って所かな?」
「…へえ?おもしろいじゃないか。まるで探偵のようだよ」
「…あー、いや俺は料理人ですよ?まあ今回は、銃を持っていることが分かっている相手だからでしゃばっただけです…ほら、乾さん。みんなの所に行ってくださいな。流れ弾が当たっても知らないですよ?」
「へ?あ、いやしかし…」

緋勇はスコーピオンから目をそらさずに俺にそう言ってきた。

「いても邪魔になるだけです。それにこれだけ会話で時間を引き延ばしたんだ。彼女はエッグ探しには合流できませんよ。いなくなっていることに気付いているはずですからね」
「っち。もし今あんたたちを殺して戻っても死体が発見されれば私が手を下したってことになるのね」
「そう言う事です。乾さん、ここにいても死体が増えるだけですし、早く!」
「わ、わかった!」

そう言って、俺は階段を転げ落ちるように逃げた。

―パシュ!!――

銃声をその背に聞きながら……





「…それで?なんで、素直に彼を逃がしたんですか?」
「…よく言うよ、私が撃つそぶりを見せればすぐにでも襲い掛かりそうな気配をしてたくせに」
「あら、ばれてましたか」
「これでも修羅場はくぐっているんでね。まあ、それでも問題ないわ」
「なるほど、今いる人数を皆殺しに出来るくらいの弾薬を持ってきているという事ですか」
「……本当に、察しが良すぎて気持ちが悪いわね。まあその通りよ。あなたを殺して、後を追って全員皆殺しにしてエッグを奪ってから城に火をつける。そうすればこの地下室の事を知る人は存在せず、私は逃げられるってこと」
「…なあ、スコーピオン。人を殺してきたあなたにいい機会だから聞いておきたいことがある」
「なにかしら?」
「人を殺す時ってどんな気分なんだ?」
「さあ?なにも。私の障害を排除する。そこに命があるもないも関係ないわ」
「…そっか。じゃあ、俺は一生理解できないことなんだな。俺は命を奪うのは、「食」に関わるから。その命を殺して頂く。食材を奪い合い殺し合う。…ああ、例外は相手を殺さなければ自分の大切なものを守れない時くらいか」
「へえ。そこに「自分が危なくなったら?」を加えておけば?」
「へ?ああ、大丈夫ですよ。俺は≪殺されない≫。だから誰かを殺したりすることは≪この≫一生ではありえませんよ」
「…はあ。なにか、あなたの話は要領が得ないわ。じゃあ、死になさい」

そう言って、彼女は俺に銃弾を放った。
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