368部分:第二十八話 余命その十
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第二十八話 余命その十
「これがかなりです」
「蕎麦は打ち方が肝心ですが」
佐藤もだ。その見事なコシの蕎麦を楽しみながら話す。
「どうされたのですか?それが」
「はい、足です」
「足を使いました」
シェフ達はここでこう話した。足を使ったというのだ。
「それを使ってです」
「足をですか」
「足で踏んだのです」
「ああ、そういうことですか」
話を聞いてだ。佐藤も納得した。他の面々もだ。
「そうした打ち方をするお店も実際にありますね」
「手で打つより力が入ります」
手より足の方が力が強い。しかも体重がかかる。だからいいのだ。
「だからです」
「成程。それでここまでのコシですか」
「料理は手だけでするものではありません」
シェフの一人が話す。
「足も何もかもを使ってするものです」
「全てをですね」
「勿論頭もです」
それもあった。
「頭も使ってそうしてです」
「頭もですか」
「覚える、そして考える」
具体的にはそういうことだった。
「そのうえで、です」
「成程。そういうことですか」
「はい、全てを使って作るものです」
料理全体のこともだ。ひいての話だった。
「ですから足もまた然りです」
「それでこの味ですね」
納得した顔になりだ。佐藤は頷いた。
そして義正も真理もだ。納得した顔になり述べたのである。
「足。料理にはあらゆるものを使う」
「そういうことですね」
「お蕎麦もまた」
「召し上がって下さい」
さらにだというのだ。
「たっぷりとです」
「お蕎麦はまだまだあります」
量もだ。あるというのだ。
「ですからどうかです」
「堪能して下さい」
「では」
義正が応えた。
そうして蕎麦を食べていく。その中でだ。
鐘が鳴り続けている。その鐘の音は。
一つずつ鳴っていく。その音を聴いても言う彼だった。
「日本ならではですね」
「そうですね。除夜の鐘は」
「日本だけですね」
屋敷の者達がだ。彼に笑顔で話す。
「百八の煩悩は支那にもありますが」
「百八の禍いですね」
義正はふと言った。そしてそれはというと。
「水滸伝にもありますね」
「確か水滸伝は」
今彼の言葉に応えたのは佐藤だ。無論彼も蕎麦を食べている。
「あれでしたね。最初に百八の星が出ますね」
「そしてその百八の星がです」
「禍いの星だったのですね」
封じられていた星達が出てだ。物語がはじまるのである。
「それでしたね」
「その禍いの星が天下を乱す筈でしたが」
義正は水滸伝のその話もする。
「天下を平安に導くのはどうもですが」
「あの辺りは矛盾していますね」
「そう思います」
こう佐藤にも話す彼だった。
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