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名探偵と料理人
第二十七話 -黒の組織との再会-
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「はぁはぁはぁ……」
「今日はこのくらいにしておきましょうか」
「は、はい。あ、ありがとうございました龍斗先生……」

そういって道場に倒れる夏さんもとい明美さん。全身で息をし汗まみれになっている。

「なんや、久しぶりに見させてもろたけど夏さんもかなり常識外の動きが出来るようになってきたなあ。はい、タオル。夏さん、お水いります?」
「ちょ、ちょっと待って。後で頂くわ…」

彼女の体が万全になって俺は約束通り訓練を始めた。といっても、俺が経験したことがあるのは一龍のオヤジのしごきに美食家志望の孤児の訓練、それに今生の父さんから受けた徒手空拳の訓練だけだ。そのどれもが割りとおかしいものばかりなので参考にはならなかった(特にオヤジの訓練は頭がオカシイ)。
ということで彼女にあった訓練メニューを考えなければならなくなったのだが、色々検証した結果「身体操作」を極めて、軽い対人戦をこなせば彼女に課した条件(自衛及び妹を護衛できる)をクリアできそうなのが判明した。彼女を生かすために入れたグルメ界のドクターフィッシュによる肉体改造は俺の想像以上だったわけだ。
だが元は荒事に全く縁もなく、しかも本人いわく運動神経はかなり悪かった彼女はその力を十全に扱えるわけがなくて。そこでまずは体の動かし方に慣れてもらっている最中というわけだ。バランス感覚、動体視力、反射神経、感覚強化などなどを使い物にするために俺が考えた訓練をこなしてもらった。
今日やったのは俺が彼女に半径1mのサークルの中に入ってもらいそこから出ずに俺が投げるピンポン球をひたすらよけるという訓練をした。

「いたたたた…」
「夏さん?どないしました?」
「いえね、足の親指の皮がむけちゃって」
「ほんまや。龍斗、治療したってーな」

うんうん、しっかり訓練の目的はうまくいっているみたいだ。体重移動には親指が肝だからね。

「大丈夫よ紅葉ちゃん。私の中にいる子達がすぐに治してくれるから」
「まあ夏さんの言う通りなんですけど彼らも何もないところから生み出すわけではないので…はい、彼らにとって栄養満点の特製軟膏をぺたりとな」
「〜〜〜〜〜ッ!!ちょ、ちょっとつけるなら先に言ってからにしてよ!しみるのよ!?」
「油断大敵、ですよ?」

彼女も常人では考えられない身体にも慣れたみたいでよかった。訓練の始めた頃はちょっとした傷が数分と経たず治るのを見て複雑な顔をしていたからな。
そのあと、三人で道場の掃除をした。因みに紅葉の言っていた常識外の動きというのは映画のマトリックスのような動き(最初、彼女はサークル内で動いてはいけないと勘違いしていた)のことだ。まあ今回の訓練の趣旨と違うのですぐに訂正を入れて、限定範囲で無駄のない体重移動を覚えてもらう訓練を続行したんだけどね。


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