366部分:第二十八話 余命その八
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第二十八話 余命その八
「それは如何でしょうか」
「そうですね。一年の終わりもまた」
「二人で過ごすのがいいかと。それに」
「それに?」
「大晦日もまた、です」
義正は微笑みだ。今度出すものは。
「食べるものがありますね」
「お蕎麦ですね」
「はい、お蕎麦です」
今度出す食べ物はこれだった。
「お蕎麦も二人で食べましょう」
「そうですね。それもまた」
「季節それぞれに素晴らしい食事もあります」
花だけではなかった。あるものは。
「ですからそういうものもです」
「楽しみますか」
「はい、そうしましょう」
こうした話をしてだった。二人はだ。
大晦日を迎えた。夜になるとだ。
次第に終わりの時が近付いてきていた。一年の終わりのだ。そうしてだ。
夜の屋敷の遠くからだ。音楽が聴こえてきた。その音楽は。
鐘の音だ。それを聴いて言うのである。
「除夜の鐘ですね」
「もう一年が終わるからですね」
「百八の不浄を消す鐘です」
その音がだ。今二人にも聴こえてきていた。
「それが今です」
「鳴っていますね」
「はい、鳴っています」
義正は真理にそうだと話すのである。
「そしてです」
「ここで、ですね」
「はい。もう出来上がります」
義正が言うとだった。二人が今いる部屋、二人の部屋の扉からだ。
婆やがだ。扉をノックしてだ。こう言ってきたのである。
「出来ました」
「お蕎麦がですか」
「はい、お蕎麦がです」
こうだ。二人に言ってきたのだ。
「どうぞ」
「わかりました」
真理が応えた。そうしてだ。
義正が扉を開ける。見れば婆やはざる蕎麦を二つ持って来ていた。数は二つだ。
そのざる蕎麦を受け取ってからだ。義正はその婆やに尋ねた。
「それでなのですが」
「はい、私達もですね」
「年越し蕎麦は召し上がられますか?」
「私達の分ももうすぐできます」
そうだとだ。婆やは義正に微笑んで答えた。
「ですからどうかお先に」
「そうだね。ここは」
「ここは?」
「皆の分もあるし。だから」
それでだというのである。
「皆で食べたいな」
「お蕎麦をですか」
「うん、どうかな」
こう婆やに提案したのである。
「今ふと思ったけれどね」
「そうですね。それはいい考えですね」
「年越しは特別だし。それに」
「それにですね」
「今年は色々あったから」
だからだというのだ。余計にだ。
「その一年を皆で振り返る為にもね」
「屋敷にいる皆さんと共に」
「年越し蕎麦を食べたいんだ」
まさにそれでだというのだ。
「そう考えているけれど」
「わかりました。それでは」
「それでいいんだね」
「食堂にいらして下さい」
婆やはここでも微笑み
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