ペルソナ3
1974話
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まず最初に沈黙を破って口を開いたのは、武治の方だった。
その視線には数秒前の険しいものは消え、どこか言い聞かせるような色を持つ。
「美鶴、お前の気持ちは嬉しい。だが、お前は自分なりの人生を歩めばいい。無理に桐条グループに関わる必要はないのだ」
「違います。私は義務感とか、そのようなものから桐条グループの経営に関わろうとしている訳ではありません。ただ、少しでもお父様の手助けになればと……」
「私の方は問題ない。実際、今までも特にこれといった問題なかっただろう」
「それはっ! ですが、お父様は間違いなく疲れているではありませんか。私は、お父様が身体を壊さないかが心配です」
そう告げる美鶴の言葉は、決して嘘ではないのだろう。
武治を心配する視線は、真剣なものだ。
だが、そんな視線を向けられても武治が美鶴の言葉に頷く様子はない。
「美鶴の気持ちは嬉しい。だが、私とて仮にもこれまで桐条グループの総帥としてやって来たのだ。今日明日に美鶴がいなければ身体を壊す……という事はない。美鶴には私の為ではなく、もっと自分の為に時間を使って欲しい。親というのは、そう願うものなのだ」
美鶴に負けない程に真剣な様子で告げる武治。
……普通こうういう時ってのは、親の方が自分の後を継げと強制し、子供の方は自分が好きに生きたいと、そう主張するのが一般的だと思うんだが……完全に正反対だな。
「それでしたら、娘としても父親の健康を心配するのは当然の事なのでは?」
お互いに平行線とでも呼ぶべき、この光景。
正直俺がいる必要はあるのかと、そう思わないでもない。
となると、やっぱり俺がこれをどうにかする必要があるのか?
けど、俺が何か言っても、どうにか……いや、丁度いい話題があったな。
「話は変わるが……」
2人がまだ言い争いをしているのを見ながら、それを承知の上で強引に話に割って入る。
「最近、巌戸台分寮に新しい生徒が入ったんだって?」
「む。それは……別に正式に巌戸台分寮に入った訳ではない。理事長の知り合いの子供が、夏休みになったにも関わらず両親の都合で家に帰ることが出来なくなったらしくてな。それでだ」
美鶴にとっても関わりのある話だった為か、取りあえず武治との言い合いを中断し、そう答えてくる。
「小学生だって?」
「うむ。……その、色々と訳ありの子でな」
言いにくそうな様子を見せる美鶴だが、幾月が連れてきた以上に何かあるのか?
ちなみに、その子供についての情報源は、順平からのメールだったりする。
剣道部の練習があるので、一緒に遊ぶという訳にはいかないが……それでも、メールのやり取りくらいはしている。
折角の夏休みなのに、全く休む暇がないという泣き言がよくメールで
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