361部分:第二十八話 余命その三
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第二十八話 余命その三
「あの人は桜の下で死にたいと言われましたね」
「そうでしたね」
「はい、ですから」
それでだとだ。真理は話す。
「私も。できれば」
「桜の下で、ですか」
「どうせ死ぬのならそうしたいです」
この望みをだ。今話したのである。
「これは我儘でしょうか」
「そうは思いません」
「違いますか」
「はい、それはです」
「それは?」
「夢です」
それだというのである。
「夢ですから」
「我儘ではありませんか」
「夢と我儘は違います」
義正はこのことをだ。真理に話した。
「我儘は利己というものですが」
「夢はですか」
「夢であるのならそれは利己ではありません」
「では何になるのでしょうか」
「希望です」
それだとだ。真理に話したのである。
「それは希望になります」
「夢は希望ですか」
「そうです。希望ですから」
「いいのですね」
「人は夢があるから生きられます」
ひいてはだ。人そのものについての話もしたのである。
「ですから。私達はです」
「桜を。最後に見て」
「そうしましょう」
こう述べたのである。
「それでどうでしょうか」
「では。私は」
真理は考える顔になりそれからだった。
「夢を持ちます」
「はい。桜を二人で見て」
「最後にそうしたいです」
義正に言ったのだった。
「それを夢にします」
「そうしましょう」
「是非共」
「ではです」
ここまで話してだった。義正も。
一呼吸置いてからだ。真理に話してきた。
「桜ですが」
「桜は?」
「人を待つ花です」
そうした花だと話すのだった。
「そうしてくれますから」
「待ってくれるのですか」
「人は春を待ちますね」
このことからだ。彼は離した。
「ですから桜もです」
「人を待ってくれているんですか」
「そうです。ですから私達もです」
「その桜に向かってですね」
「次の次の春を目指しましょう」
これが義正が今真理に話すことだった。
「是非共」
「それではですね」
「桜を。その桜を」
どうするか。二人で話していく。
「見ましょう」
「私達を待ってくれている花を」
こう話してだった。二人は今決意し約束したのだった。
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