31 曇天
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万斉は、戻ってからこんな会話をしたそうだ。
私と別れた後、万斉は晋助に報告をしたそうな。
_「そうかィ。伊東は死に、真選組が生き残ったか。
存外、まだまだ幕府も丈夫じゃねェか。
否、伊東が脆かったのか…?それとも…?
万斉、お前が弱かったのか?」
_「元々今回の仕事は、真選組の目を幕府中央から引き離すのが目的。春雨が無事、密航し中央との密約がなつた、となれば戦闘の必要もなし。結果、牽制の意は、果たしたでござる。」
_「オラァ、真選組を潰すつもりで行け、と言ったはずァ。」
_「何事にも重要なのは、ノリとリズムでござる。これを欠けば、何事も上手く行かん。乗れぬ、とあらば即座に引くのが拙者のやり方。」
_「万斉、俺の唄には乗れねェか?」
_「白夜叉が、『オレの守るもんは、今も昔も何一つ変わらん 』、と。
晋助、何か分かるか?
最後まで聞きたくなってしまったでござるよ。
…ヤツらの唄に聞き惚れた。拙者の敗けでござる。」
_「つまりは、今回の事件は、私が鬼兵隊から出たことに問題があった、ということですか?」
_「たぶん、そうでござる。
さ、晋助がお待ちかねでござるよ。」
と、晋助の部屋の前へ案内された。
普段の袴姿に着替えていた私は、今その部屋の前に立っている。
見張りの鬼兵隊隊士が部屋の方に声をかける。
_「総督、零杏殿がおいでになりました。」
_「入れ、」
と、晋助の声がする。
懐かしい声がする。
後ろには、万斉が控えている。
のんびり煙管を咥えていると、
襖が開いて、中に通された。
_「ごきげんよう、晋助。」
_「零杏、帰ってきたか?」
_「いえ、宣戦布告にしに参りました。」
まぁ座れや、と座布団に促される。
_「ほォ。宣戦布告?」
座ってから煙管を外して、一服する。
_「ええ。単刀直入に言わせてもらうが、
伊東の件は、鬼兵隊の仕業だろう?」
目は晋助を睨み、口の端だけを上げて微笑む。
_「よく分かってんじゃねェか、」
_「全て、バレバレだったぞ。怪しいことこの上ない。
どうせ、私を連れ戻そうとしたが故に起こったことだろうとは思っていたが、まさかビンゴだったとはな、」
鉛の空 重く垂れ込み
真白に澱んだ太陽が砕けて
耳鳴りを尖らせる
ひゅるりひゅるり
低いツバメが8の字なぞって
ビルの谷を翔る
もうじきに夕立が来る
曇天の道を
傘を忘れて歩く彼女は
雨に怯えてるので僕
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