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儚き想い、されど永遠の想い
360部分:第二十八話 余命その二

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第二十八話 余命その二

「そうするのですね」
「この一年は」
「そうですね。一年の間」
 ここでだ。真理はだ。
 義正にだ。こんなことを言った。
「できればです」
「できれば?」
「桜を見たいです」
 こう言ったのである。
「桜を。春になり」
「そしてそこからですね」
「夏、秋、そして冬も見て」
 今の冬ではなくだ。次の冬もだというのだ。
「そうしてです」
「次の次の春もですか」
「義正さんと一緒に迎えたいです」
 真理はこうだ。義正に話した。
「桜を見て」
「一年が過ぎてしまいますが」
「それでもです」
 過ごしたいというのだ。一年をだ。
 こう話してからだ。真理はだ。
 少し諦めの顔になりだ。義正にこんなことも話した。
「一年を過ぎて生きるのは難しいですね」
「お医者様はそう言っていましたね」
「そうでしたね」
「ですが私は」
 それでもだとだ。真理は話していく。
「その一年を過ぎてです」
「そうしてですね」
「はい、桜を見たいです」
 次の次の春の。その桜をだというのだ。
「どうせならです」
「そうですね。ではです」
「それでは?」
「少しだけ頑張ってみましょうか」
 真理に話したのだった。
「少しだけです」
「一年を過ぎてもですか」
「二人で」
 一人だけではなかった。ここでも。
「二人で頑張ってみましょうか」
「私だけではなくですね」
「二人で。桜を見たいのですね」
「はい」
 その通りだとだ。真理はこくりと頷いて答えた。
「私は。義正さんと」
「それならです。真理さんお一人のことではないです」
「二人で、ですね」
「はい、二人で見るものなら」
 それならだと話してだった。そしてだ。
 このこともだ。真理に話した。
「それにいつも二人だとお話しましたね」
「そうですね。それなら」
「余計にです。私達はいつも二人ですから」 
 だからだ。余計にだというのだ。
「ですからそうしましょう」
「わかりました。それなら」
 真理もだ。義正の言葉にこくりと頷いたのだ。再び。 
 そうした話をしてだった。真理はだ。  
 桜についてだ。こんなことも言ったのだった。
「桜は確か」
「桜は?」
「はい、西行法師ですが」
 かつての歌人だ。元々は武士だったが出家して僧侶になりだ。歌人としても名を馳せる様になったのだ。真理はその歌人のことを話したのである。

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