36部分:第三話 再会その十一
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第三話 再会その十一
「咲いていてそして」
「散る。その最後も美しいからこそ」
「常に咲いていては価値がないですか」
「八百比丘尼でしたね。死ねない苦しみ」
義正は話にそれも入れた。人魚の肉を食べて死ねなくなったというその女のことをだ。伝説の中にあるその女のことも話すのだった。
「散らない花、終わらないものは」
「よくはありませんか」
「そうではないでしょうか。ですから桜は」
「価値があるのですね」
「そういうことでしょうか。だからこそ桜は」
「美しく。価値のあるもの」
二人で話していく。そうしてであった。
二人はまた百合を見た。その池のところに咲いている百合を。
それを見てからその場を去った。そしてだ。
義正はだ。友人達の場所に戻った。するとだ。
そこに来た彼はだ。こう言うのだった。
「少しね」
「少し?」
「どうしたんだい、一体」
「また少し席を外していいかな」
こう彼等に言うのだった。
「そうしていいかな」
「何だい、何処かに行くのかい」
「さっきは何処かに行ったと思ったけれど」
「またなのかい」
「そうなんだ。いい花を見つけてね」
義正は正直にだ。友人達に話した。
「それでだけれどね」
「花かい」
「それは実際の花だね」
「君が言うとなると」
「何だと思ってるんだい?」
ここで言ったのはだ。義正だった。
彼は自分で言ってだ。そのうえで困った顔になってだ。友人達に対するのだった。
「まあそれはね」
「花はもう一つの意味があるじゃない」
「それだよ」
「美人のことだっていうのかい」
そのもう一つの意味は義正にもわかった。
それだとだ。察してそのうえで友人達に返した。
「そう言うのかい」
「まあ違うみたいだね」
「実際に花を見に行くんだね」
「この場合は」
「そうだよ。嘘は言わないよ」
それは確かだというのだった。義正の言葉はしっかりとしたものだった。
「本当にね」
「わかってるよ。じゃあね」
「行ったらいいよ」
「僕達はここにいるからね」
こう言ってだ。そうしてだった。
彼を行かせる。こうしてだった。
義正はまた舞踏の場を後にした。そうして向かったのは。
先程喜久子と共に来たあの庭だった。その池にである。
そこに来てだ。あの百合のところに向かうのだった。
かなり美しい百合だった。それでまた見たくなったのだ。
緑の絨毯を踏みながら百合のところに向かう。いよいよその百合が見えようとしていた。
だが、だ。そこには。
白百合だけではなかった。彼女もいたのだった。
彼女はその百合の傍にしゃがみ込んでだ。そのうえで百合を見ていた。
それを見てだ。義正は。
去ろうとした。だがそれはできなか
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